内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
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内部被ばくと健康被害

11/24(日) 11月勉強会(会員限定)のお知らせ

11月勉強会(会員限定)のお知らせです。 日 時 11月24日(日)13:00~15:00場 所 市民活動サポートセンターラウンジ    (JR浦和駅東口浦和パルコ9階) ・会員限定です。参加費は無料。・例会に参加された方は、資料をお持ち下さい。

11/9(土) 総会準備打ち合わせ(予備日)

★★★総会準備打ち合わせ(予備日)★★★ 日 時 11月9日(土)時間未定場 所 市民活動サポートセンター南ラウンジ    (JR浦和駅東口浦和パルコ9階)

政策提言 山本太郎と女性サポーターズの8.30集会 参議院会館 2013830

政策提言山本太郎と女性サポーターズの8.30集会                2013年8月30日(金) 参議院会館講堂  13:00~15:00                提案:内部被ばくを考える市民研究会 川根 眞也                メールアドレス:kawane@radiationexposuresociety.com                ホームページ:http://www.radiationexposuresociety.com/ 【政策の概要】1.空間線量0.23マイクロシーベルト/時は年間被ばく1ミリシーベルトではない。強制移住のレベル。年間被ばく1ミリシーベルトは外部被ばく+内部被ばくで計算。政府は強制移住のレベルを決定し、住民の明らかな健康被害を避ける行政措置を発効すべき。 2.18歳未満立ち入り禁止、妊娠する可能性のある女性の立ち入り禁止、飲食禁止の「放射線管理区域」は空間線量0.6マイクロシーベルト/時ではない。空間線量0.13マイクロシーベルト/時相当。政府は学校閉鎖の基準を決定し、「放射線管理区域」での教育活動をやめて、生徒を疎開させるべき。 3.全国で学校給食の食材の検査を実施すべき。政府は現在の市民のみならず、未来の子どもたちを健康被害から守るべき。1.0ベクレル/kg以下のレベルまで学校給食の食材を測定するべき。 4.政府の責任ですべての原発労働者の健康管理を行うカルテを作成し、少なくとも年1回の健康診断を行うべき。事故から2年半、原発労働者の死亡者数を公開すること。政府は東電OBの退職金の財源を中心に、被ばく限度量100ミリシーベルト(5年間積算)を超えた原発労働者の生涯賃金を支払うこと。 ○ 山本太郎さん後援会、という固い名称ではなく、山本太郎サポーターズ倶楽部のような親しみやすい名前を付けた会を作ってほしい。 1.空間線量0.23マイクロシーベルト/時は年間被ばく1ミリシーベルトではない。強制移住のレベル。年間被ばく1ミリシーベルトは外部被ばく+内部被ばくで計算。政府は強制移住のレベルを決定し、住民の明らかな健康被害を避ける行政措置を発効すべき。 ベラルーシでは許容値として1ミリシーベルトが定められています。これは内部被ばく換算で計算されています。年間等価線量(内部被ばく)。2004年測定結果ではセシウム137 Ⅰ~5キュリー/km2(同3.7万~18.5万ベクレル/m2)の地域住民の外部被ばくと内部被ばくは以下のようになりました。  外部被ばく  0.62ミリシーベルト  内部被ばく  0.40ミリシーベルト  合計     1.02ミリシーベルト しかし、これはあくまでも平均化されたもので、人それぞれに被ばく線量は変わってきます。セシウム137 1~5キュリー/km2(同3.7万~18.5万ベクレル/m2)の地域と言っても、森や川にはたくさん放射性物質があります。日本でも山を歩いたり、森や川の物を取ったりして食べる人は高い外部被ばく、内部被ばくをすることになります。(ベラルーシ・プロジェクト報告 p.6)ベラルーシでは年間1ミリシーベルトを超える地域は計画的移住区域に指定されています。  日本政府は、空間線量0.23マイクロシーベルト/時を年間被ばく線量1ミリシーベルトとしています。 この計算方法は以下の通りです。0.23マイクロシーベルト/時の内訳は以下の通りです。 自然放射線  0.04マイクロシーベルト/時 原発事故による放射性物質による空間線量 0.19マイクロシーベルト/時で合計0.23マイクロシーベルト/時です。0.19マイクロシーベルト/時でなぜ1ミリシーベルトになるのでしょうか?政府は、1日8時間屋外、16時間屋内で生活すると想定しています。 1日 8時間 屋外            0.19×8時間16時間 屋内 ※コンクリートの家屋内では屋外の40%の空間線量になると想定                  0.19×0.40(40%ということ)×16時間 1日の合計×365日=年間外部被ばく線量=(0.19×8+0.19×0.40×16)×365                    =996マイクロシーベルト                    =0.996ミリシーベルト                    ≒1ミリシーベルト 以上から、空間線量0.23マイクロシーベルト/時が年間被ばく1ミリシーベルトとしています。 日本政府は外部被ばくだけで1ミリシーベルトを推定するという間違いを犯しています。そして、屋内は屋外の40%になるという想定は現実には間違っています。屋外とほぼ同じというところもたくさんあります。少なくとも屋内の空間線量が屋外の80%になっている地域がたくさん存在します。人によって、屋外での生活時間は異なります。住民の実測値によって、被ばく線量を推定すべきです。ベラルーシのように、住民のガラスバッジ等での外部ひばく線量測定や、ホール・ボディー・カウンター(WBC)での内部被ばく年間等価線量の実測値に基づき、「外部被ばく」+「内部被ばく」で1ミリシーベルト相当とする地域を指定し、住民の移住を行うべきです。ウクライナ、ベラルーシ、ロシアのチェルノブイリ事故後の27年間の教訓は、年間被ばく1ミリシーベルトのレベルで明らかな健康被害が出ている、ということです。日本政府は土地汚染(ベクレル/m2)によって年間被ばく1ミリシーベルト(外部被ばく+内部被ばく)相当する地域を指定し、住民の強制および計画的移住を行うべきです。 2.18歳未満立ち入り禁止、妊娠する可能性のある女性の立ち入り禁止、飲食禁止の「放射線管理区域」は空間線量0.6マイクロシーベルト/時ではない。空間線量0.13マイクロシーベルト/時相当。政府は学校閉鎖の基準を決定し、「放射線管理区域」での教育活動をやめて、生徒を疎開させるべき。 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律による管理区域」(平成十二年科学技術庁告示第五号、最終改正 平成二十一年十月九日 文部科学省告示第百六十九号 第四条)の定める「放射線管理区域」とは4つの規定があります。1.外部被ばく線量が3カ月で1.3ミリシーベルト2.空気中の放射性物質の濃度 セシウム137の場合 3000ベクレル/m33.その場所の表面汚染度 セシウム137の場合 40000ベクレル/m24.外部被ばくと空気中の放射性物質の吸入による内部被ばくがある場合 それぞれの基準値の和が1 <例> 外部被ばく3カ月で0.65ミリシーベルト、空気中のセシウム137 1500ベクレル/m3(参考) 『放射線管理区域 18歳未満立ち入り禁止』     http://www.radiationexposuresociety.com/archives/1593  これを1の項目だけで考えて空間線量0.6マイクロシーベルト/時が「放射線管理区域」と紹介する事例が散見されます。しかし、これは間違いです。その計算とは 「外部被ばく線量が3カ月で1.3ミリシーベルト」 ⇒ 1.3×1000(これでマイクロシーベルトの単位になる)÷90日(3カ月)÷24時間  =0.60マイクロシーベルト/時 これはX線技師などが0.1ミリシーベルトに相当する被ばくを何回も受けることを想定した「放射線管理区域」の基準です。原発事故で問題にすべきは3のその場所の表面汚染度40000ベクレル/m2です。 そして、セシウム137の表面汚染度が40000ベクレル/m2に相当する空間線量は、高さ1mで0.13マイクロシーベルト/時です。 下は2011年5月24日の原子力委員会の資料です。(原子力発電環境整備機構NUMO 河田東海夫フェローが作成)   37kBq/m2(キロベクレル/m2)=37000ベクレル/m2≒40000ベクレル/m2  ↓空間線量0.13マイクロシーベルト/時と解説している。 空間線量が0.6マイクロシーベルト/時が「放射線管理区域」とすることは、政府の基準をぬるくする効果しかありません。先にも書いたように、0.23マイクロシーベルト/時はウクライナ、ベラルーシ、ロシアでは計画的移住区域のレベルです。「放射線管理区域」をはるかに超える規定となっています。 「放射線管理区域」は空間線量0.13マイクロシーベルト/時相当の地域です。政府は学校閉鎖の基準を決定し、「放射線管理区域」での教育活動をやめて、生徒を疎開させるべきです。 3.全国で学校給食の食材の検査を実施すべき。政府は現在の市民のみならず、未来の子どもたちを健康被害から守るべき。1.0ベクレル/kg以下のレベルまで学校給食の食材を測定するべき。 全国の学校給食の食材の放射性物質濃度を測定する動きが広がっています。福島県庁の食堂の食材の検出限界は1ベクレル/kg。札幌市教育委員会は学校給食の食材は4ベクレル/㎏の検出限界まで測定し、1度検出された食材はその後使わない方針。(2011年12月1日より)港区教育委員会は1週間ごとに給食と牛乳と検出限界0.7ベクレル/kgまで測定。一方、東京都23区内でも学校給食の食材の検査を年3回しかやらない区や年1回しか給食まるごと検査をやらない区など、まったくひどい区が多くあります。学校給食まるごと(1週間分または1食分)の検査を行っている区区  学校給食まるごとの放射性  セシウム134検出限界    放射性セシウム合計     物質濃度検査の年間回数   セシウム137検出限界     検出限界千代田区       年1回    それぞれ1ベクレル/kg  1ベクレル/kg港区    年1回・未実施校あり それぞれ0.7ベクレル/kg  1.4ベクレル/kg新宿区        年4回    それぞれ10ベクレル/kg    25ベクレル/kg文京区   年1回・未実施校あり それぞれ10ベクレル/kg    20ベクレル/kg台東区        年4回    それぞれ 5ベクレル/kg    10ベクレル/kg墨田区        年11回   それぞれ6~8ベクレル/kg  13~15ベクレル/kg品川区        年3回   それぞれ0.9~1.1ベクレル/kg 1.8~2.2ベクレル/kg大田区 学校年3回 保育施設年1回 それぞれ 5ベクレル/kg    10ベクレル/kg世田谷区       年1回?  それぞれ3.3~3.9ベクレル/kg 7.2~7.6ベクレル/kg渋谷区        年3回   それぞれ1.1~1.8ベクレル/kg 2.6~3.3ベクレル/kg杉並区        年2回   それぞれ0.3~0.5ベクレル/kg 0.7~1.0ベクレル/kg豊島区   年1回・未実施校あり それぞれ1.4~1.9ベクレル/kg 2.9~3.8ベクレル/kg北区         年2回    それぞれ 5ベクレル/kg    10ベクレル/kg荒川区        年3回    それぞれ25ベクレル/kg    25ベクレル/kg 学校給食の食材の検査を行っている区区  学校給食の食材の放射性   セシウム134検出限界    放射性セシウム合計     物質濃度検査の年間回数   セシウム137検出限界     検出限界中央区        年3回    それぞれ25ベクレル/kg    25ベクレル/kg江東区   年1回・未実施校あり    それぞれ6~8ベクレル/kg 25ベクレル/kg目黒区      年6回1品目 それぞれ3.8~6.2ベクレル/kg 7.7~12.1ベクレル/kg練馬区        年1回    それぞれ8~10ベクレル/kg  25ベクレル/kg 学校給食の食材、学校給食まるごと放射性物質濃度の検査を行っていない区中野区「区として給食食材中の放射性物質の検査は実施していません」板橋区「東京都教育委員会においても学校給食用食材の放射性物質検査を実施しており、板橋区もこの事業に参加しています。」抽出検査のみ。足立区 2012年1月 区内を5つのエリアに区分し、各エリアから小学校・中学校・保育園各1施設、合計15施設で検査したのみ。葛飾区 2012年度 調理済み給食・牛乳の放射性物質検査年1回を行ったが、2013年度は行わない。江戸川区 学校給食の食材、学校給食まるごと放射性物質の検査を一度も行っていない。江戸川は14歳までの子どもの人口が、約9万4,000人(2012年1月現在)。東京23区では世田谷に次いで多い。 『札幌市 学校給食の食材4ベクレル/kg以上の放射性物質がでたものは使わない』http://www.radiationexposuresociety.com/archives/1599『福島の県庁食堂ではキロ1ベクレル、小学校給食はキロ10ベクレルが規制値。』http://www.asyura2.com/13/genpatu32/msg/557.html  特に中野区の『福島第一原発事故に伴う放射線に関する情報』のページの内容がひどいです。放射性セシウムと自然放射能カリウム40とをごっちゃにして説明しています。『中野区 福島第一原発事故に伴う放射線に関する情報』http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/402000/d012663.html 食品と暮らしの安全基金の小若順一氏は4回のウクライナ調査(第1回2012年1月~第4回2013年3月)で、手足の関節が痛い、頭痛がして夜眠れない、鼻血が出る、自立神経失調症になる、風をひきやすい、といった健康被害が出る食品汚染のレベルが少なくともセシウム137で1.1ベクレル/kgであることを明らかにしています。 『食品と暮らしの安全基金 第4回ウクライナ調査報告』http://tabemono.info/report/chernobyl.html  政府は現在の市民のみならず、未来の子どもたちを健康被害から守るために、全国で学校給食の食材の検査を実施すべきです。セシウム137が検出限界1.0ベクレル/kg以下のレベルまで学校給食の食材を測定するべきです。 4.政府の責任ですべての原発労働者の健康管理を行うカルテを作成し、少なくとも年1回の健康診断を行うべき。事故から2年半、原発労働者の死亡者数を公開すること。政府は東電OBの退職金の財源を中心に、被ばく限度量100ミリシーベルト(5年間積算)を超えた原発労働者の生涯賃金を支払うこと。 すでに原発事故から2年と半年がたち、東京電力福島第一原子力発電所の事故処理作業を行っている原発作業員は実数で5万人、のべ人数では30万人にも達しようとしています。2013年8月5日の朝日新聞は、「東電の集計によると、福島第一原発で2011年3月11日の事故から同年12月末までに働いた1万9592人の累積被曝線量は平均12.18ミリで、約5割にあたる9640人が5ミリ超の被曝をした。この人たちは白血病を発病すれば労災認定される。今年6月末には累積で5ミリ超の被曝をした人は1万3667人になった。今後も汚染水対策など被曝の恐れが高い作業が予定され、白血病の『年5ミリ以上』の労災基準に該当する人は増え続けるとみられる。」と報じています。 チェルノブイリ原発事故後、除染作業にあたったリクビダートルは、数年から10数年後には明らかな健康被害にあっています。ベラルーシ。「検査を受けた53人のリクビダートル(24歳~41歳)のうち、1990年~1991年(事故から4、5年後)にかけては11人が、1993年から1998年(同7年後から12年後)にかけて26人が認定障害者に登録された。2004年(事故から18年後)には生存していた患者全員が障害者認定を受けた。」(調査報告 チェルノブイリ被害の全貌 岩波書店 2013年4月26日 p.38)      ウクライナ。チェルノブイリ原発事故後、除染作業員(リクビダートル)は事故から5年後には非悪性腫瘍の障害者として認定される人が目立って増え(1991年)、1992年には1000人に75人、1994年には1000人に140人、2000年には200人、つまり5人に1人が障害者となった。(調査報告 チェルノブイリ被害の全貌 岩波書店 2013年4月26日 p.42) 政府の責任ですべての原発労働者の健康管理を行うカルテを作成し、少なくとも年1回の健康診断を行うべきです。そして、作業中の死亡者は報道されても、宿舎での突然死や労働契約期間外での死亡が計算に入っていません。すべての原発労働者の死亡者数を公開すべきです。被ばく限度を超えると首切りになる事態はさらなる、被ばく隠しを産み、過酷な条件へと労働者を追い込むだけです。政府は東電OBの退職金の財源を中心に、被ばく限度量100ミリシーベルト(5年間積算)を超えた原発労働者の生涯賃金を支払うべきです。 ○ 山本太郎さん後援会、という固い名称ではなく、山本太郎サポーターズ倶楽部のような親しみやすい名前を付けた会を作ってほしい。    

トリチウムの環境動態  阪上正信 核融合研究 第54巻第5号1985年11月 解説 より

[初稿]2013年8月26日 [改訂]2019年10月12日 3Hや14Cなど質量数の表記が誤っていたため、訂正しました。解説を加えました。   [解説]2019年10月12日  東京電力、福島第一原発の汚染水について、大阪市長松井一郎氏は「処理済みで自然界の基準を下回っているのであれば、科学的根拠を示して海洋放出すべきだ」と発言しました。以下、毎日新聞2019年9月17日記事参照。しかし、トリチウムの海洋放出基準は、人間が勝手に「これくらいは安全だろう」と決めた基準であり、自然界の基準などそもそも存在しません。  では、一体自然界にどれくらいのトリチウムが生産され、また、平衡状態にあるのかについて書かれた論文が以下です。長文ですが、ご一読下さい。自然界に存在するトリチウムに対して、核実験や原発の稼働、核燃料の再処理、核融合で人間の生み出したトリチウムがいかに膨大なものであるかがわかります。大阪市長のように「他の国もやっているから安全」ではなく、これ以上放射能で地球を汚すことは将来にわたるがんを増やすことにしかならないのです。  地球上で宇宙線によって生まれるトリチウムは、①宇宙線によって生まれた速中性子が大気中の窒素と反応して、炭素12とトチリウムになる場合、②宇宙線によって生まれた速中性子が大気中の酸素と反応して、窒素14とトチリウムになる場合、③宇宙線の陽子によって元素が「核破砕反応」を起こしてトリチウムができる場合、④太陽から直接、トリトン(トリチウムの原子核)がやってくる場合、などがあります。そして年間の生成量と半減期12.3年によって減少していく量と考えると、全地球規模では1110PBq(ペタベクレル)が自然に存在します。だいたい3kgの質量です。日本の国土面積は地球の約1350分の1。日本には自然のトリチウムがおよそ822TBq(テラベクレル)のトリチウムが海に川に大地に平均的に存在すると考えることができます。  しかし、原発事故時に東京電力、福島第一原発に出来ていたトリチウムは3400TBq(テラベクレル)。実に日本の自然界にあるトリチウムの量822TBq(テラベクレル)の4倍以上。それを日本全体に平均的に放出するのではなく、特定の海に放出するわけですから、海の生物に、まわりまわって私たち人間に影響がでないわけがありません。 <参考>トリチウムに関する福島第一原子力発電所のこれまでの状況 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会事務局 2018年5月18日  東京電力、福島第一原発の汚染水は「処理水」であろうと海洋に放出するべきではありません。また、トリチウムだけではなく、高濃度にストロンチウム90、ルテニウム106、ヨウ素129、テクネチウム99も含まれているものであることを明記しておきます。原子力規制委員会の決めた基準ですら超えている「処理水」です。 <参考> 汚染水、浄化後も基準値超え 89万トンの8割超 福島第一 2018年9月29日 朝日新聞  新聞各紙や朝日新聞論座の投稿記事では、この基準値すらこえる放射能汚染水を「処理水」と呼び変えたり、「水」(安東量子氏の論座記事2019年10月10日)と呼び変えたりして、さも「処理されているから安全」かのようなイメージ作りをしています。  「放射能汚染水」を、「処理水」や安全な「水」と呼び変えることで、安全イメージを振りまくことは許されません。 <参考> 原発「処理水」を、なぜマスコミは「汚染水」と呼び続けたのか 現代ビジネス 林知裕 2019年10月6日 福島第一原発の「水」問題は本当に八方塞がりか ステークホルダーを交えた本当の協議はまだ尽くされていない 安東量子 NPO法人福島ダイアログ理事長 朝日新聞論座 2019年10月10日 松井・大阪市長「汚染処理水の受け入れ」可能性に言及 2019年9月17日 毎日新聞  大阪市の松井一郎市長=2019年7月、望月亮一撮影  大阪市の松井一郎市長(日本維新の会代表)は17日、東京電力福島第1原発の汚染水処理を巡り、「処理済みで自然界の基準を下回っているのであれば、科学的根拠を示して海洋放出すべきだ」と発言し、大阪湾での処理水の受け入れもあり得るとの認識を示した  松井市長は記者団の質問に答え、東日本大震災による震災がれきを大阪で受け入れた実績を引き合いに、「(大阪が協力する余地は)ありますよ」と述べた。さらに「科学者が入る検討委員会で全く影響がないと明らかにし、丁寧に説明して政治家が決断すべきだ」と持論を展開した。吉村洋文・大阪府知事も同調し、放出となれば府として協力する考えを明かした。  吉村知事も同日の定例記者会見で「国が正面から取り組まないといけない課題」と指摘し、「政治家が腹をくくって国民に説明して、やらないと先送りされていく」と述べた。さらに小泉進次郎環境相が率先して取り組むべきだと主張し、「現実に放出となれば僕は協力する」と話した。【矢追健介、津久井達】   トリチウムの環境動態 阪  上  正  信(金沢大学理学部附属・低レベル放射能実験施設)     (1985年9月30日受理)Low Level Radioactivity Laboratory,Kanagawa Univercity,Tatsunokuchi,Ishikawa,932-12. 核融合研究 第54巻第5号1985年11月 解説 より Environmental Behavior of TritiumMasanobu Sakanoue(ReceivedSeptember30,1985)Abstract  Various studies about the behavior of tritium in the environment are reviewed withcomments on several origins of their occurrences. For atmospheric tritium,differentchemical species and their seasonal variation have been studied. The average tritiumconcentration in river waters was found to be1.5~2times higher than that of precipitations at various sites of Japan.   The vertical distribution of tritium in ground water has raised an interest forthe samples collected from different wells in depth. The effect of the accidentalrelease of tritium and the tritium level around nuclear facilities are also mentioned.  「天然は人工の母であり,人工は天然の鍵である。」トリチウムがその取扱物質の主体となる核融合研究においても,既存の環境トリチウムがどこにどの程度のレベルで分布するか,どのように環境で挙動しているかなどを知ることは,核融合研究の環境安全管理,環境モニタリングのために不可欠であるのみならず,核融合研究それ自身の諸研究面と直接,間接に関連する課題もあり,諸情報の正しい解析のための意義も大きい。しかも環境トリチウムには人類誕生以前から宇宙線によりたえず生起するもの以外に,1960年代のはじめに顕著に行われた大気圏実験により全世界的に散布され,環境動態のサィクルに入ったものがあり,その汚染の現在にいたるまでの経過は,単に定常的状態のみならず,一過的な動的解析を可能にし,緊急時対策を含めた今後の対応にも貴重な手がかりを与えている。 以上のような意味から,ここでは環境トリチウムの生成源とその環境動態の情況を解説してみよう。 1.環境トリチウムの発生源1.1 天然トリチウムの発見とその存在量 ウランの化合物や鉱物をもとに発見された放射性物質(放射能)が,われわれの日常生活をいとなむ環境にもあまねく存在することが認められるようになったのは,空気の電気伝導度を研究していたJ.ElsterとH.Geitelが,今世紀初頭,地下室や洞穴の空気電気伝導度が高いことはラドンとその娘核種の存在によることを証拠づけたことにはじまる。以来,種々の天然放射能が,測定法の進歩とあいまって発見されていった1)。にもかかわらず,現在は環境放射能の代表的な核種としてその存在量のかなり多い14Cそしてトリチウムの存在予想とその発見が,約40年以上も遅れたのは注目すべきことである。これはこれらが純β放射体でその最大エネルギーがあまり大きくないことによるが,このことからも,目にみえないものの天然における存在と,一方これを認識する人智の展開には大きなへだたりのあることを思わせ示唆することが多い。 さて,そもそも天然環境とくに大気中にトリチウムが存在することが示唆されたのは1939年ごろ加速器による核反応研究において,大気からのヘリウムを照射粒子として用いたときと,地中から採取されたヘリウムを用いたときで反応生成物の収率が異なることからである。これにより大気中には3Heが多いことが認められ,それは大気中に天然トリチウムが生成存在し,その壊変により3Heが蓄積しているためとされた。このことをもとに第2次世界大戦後W.F.Libbyが,宇宙線起源による14Cおよびトリチウムの生成を論じ,その検出に挑戦したのである。まず1947年バルチモァの排水処理場のメタンガスからの濃縮試料により天然14Cの存在を発見し,つづいて1950年やっと天然トリチウムの存在が,ハンブルグの液体空気製造工場からのHe-Ne部分中の水素を精製してその放射能測定により発見された2)。また1951年には,ノルウェー製の重水にも放射能のあることが,それから調製したメタンガスの気体計数法による放射能測定により確認された3)。 このような天然トリチウムの由来は,宇宙線によって生れた速中性子(>4.4MeV)が大気中の窒素と反応したもの〔14N(n,T)12C〕や,酸素と反応したもの〔16O(n,T)14N〕を主とし,その他に一次宇宙線の陽子による核破砕反応があり,また太陽等から直接やってくる粒子としてのトリトンもある。  それらの生成率(P)がどの程度であるか,そして宇宙線強度が過去から著しい変動なしとしてその平衡存在量(E)はどの程度であるかについては色々の推定がなされてきた。トリチウムの壊変定数λ,全存在原子数N,地球の全表面積5.1×108km2=Scm2とすれば,E=P・S=λ・N。現在では0.25~0.2atom/cm2秒とされており4)5),平衡全存在量は約1110PBq(ペタベクレル)となる。この量はトリチウム重量として約3Kgに相当し,将来プラズマ核融合実現のさいの1サイト内の取扱い量はこれに匹敵することには注目したい。なお他の天然放射性核種の大気を含む地球全存在量の概量は 14C 11100PBq(ペタベクレル) , 40K 7400PBq(ペクレル) , 87Rb 740PBq(ペタベクレル) , ウラン系列 222PBq(ペタベクレル) ×14 , トリウム系列 284PBq(ペタベクレル)×10 である。 (編者注) 1Ci(キュリー)=3.7×1010Bq(ベクレル)本文ではすべてキュリー(Ci)の単位であったが、川根がすべてベクレルの単位に直しました。 単位の接頭辞単位 読み方    意味            k   キロ      ×103            M   メガ     ×106           G  ギガ     ×109       T  テラ      ×1012            P  ペタ     ×1015 m   ミリ     ×10-3 μ  マイクロ   ×10-6 n   ナノ     ×10-9 p   ピコ     ×10-12 30MCi(メガキュリー)=1110PBq(ペタベクレル)  なお天然環境でのトリチウム生成反応としてほかに,リチウム鉱物と天然環境の中性子〔ウランなどの自発核分裂やα線と軽元素との(α,n)反応由来〕が反応して,6Li(n,α)3Hによる生成も考えられるが,せいぜい0.0001atom/cm2秒程度で,宇宙線由来に比しとるに足らぬ程度である。 1.2 核爆発実験の寄与  1952年からさかんに行われるようになった水爆実験では,初期にはトリチウム自身も原料として用いられたが,通例はリチウムを原料として6Li(n,α),7Li(n,nα)3Hの反応により生成供給される。核爆発TNT相当1メガトン当たりのその生成量は370~740PBq(ペタベクレル)と推定される。なお核分裂にさいし,三体分裂(ternary fission)によっても生成するがその生成量はTNT相当1Mt(メガトン)核爆発あたり740~25.9TBq(テラベクレル)と推定されている。 (編者注)     1TBq=0.001PBq  過去の核実験の核分裂と核融合の規模別推移とそれによる降水中のトリチウム濃度の変化を図1に示す。これらによるトリチウムの生成量は全330Mt(メガトン)規模の核融合爆発により約240500PBq(ペタベクレル),全220Mt(メガトン)規模の核分裂爆発により約5.5PBq(ペタベクレル)とされている6)。そしてその約75%は地上10Km以上の成層圏に注入された。しかも核実験は主として北半球で行われ,南半球に移動またはそこで生成した量は全注入量の20%の約48100PBq(ペタベクレル)程度とされている。このことは他の放射性降下物と同様にトリチウムについても北半球の雨水中トリチウム濃度が南半球に比しかなり多かったことにあらわれている。また,ほぼ同緯度地点でも内陸部と海洋部で雨水中濃度に差があるのは,濃度の希薄な海水の蒸発による希釈効果のためである(図1の下部オタワ・ウイーンとバレンチナの比較)。  以上のような大気圏核爆発実験は1963年の部分的核実験停止条約締結以来,フランスや中国など非加盟国によってしか行われなかったので,その後の雨水中濃度は漸減した。しかし軍事用のみでなく石油や天然ガス採掘や土木工事のための地下核爆発実験もトリチウムを環境に供給する可能性があり,局所的なものとして将釆はそれらに配慮しなければならない。 1.3 原子炉・核燃料再処理その他による放出  核分裂を利用する原子炉では,約1×10-4程度の収率で三体分裂によるトリチウムが生成する。100万KW熱出力の原子炉では1日約0.48TBq(テラベクレル)のトリチウムがこのために生れる。このほかに一次冷却水中に過剰反応制御剤として10~1000ppmのホウ素が添加されている加圧水型軽水炉(PWR)では,10B(n,2α)3H,10B(n,α)7Li(n,nα)3H,11B(n,3H)9Beなどの反応によってもトリチウムが生れる。またpH調整剤としてのLiOHからも6Li(n,α)3Hによるトリチウムの生成が考えられるが,最近は7Li99.9%の濃縮同位体が使用されるようになったのでその寄与は少ない。 このようにして生れたトリチウムのうち,三体分裂により核燃料中に生じたものは,主として核燃料再処理工程まで被覆材料も含めた燃料体内に保持され,環境への放出は再処理工場でおこる。一方,一次冷却水中に生じたものは原子炉サイトから液体または気体廃棄物として環境に放されるが,その量は100万KWのPWR原子炉で年間約0.030PBq(ペタベクレル)足らずであり,BWR軽水炉ではこれより少ない。しかし重水炉では2H(n,γ)3H反応により多量のトリチウムが生成し,100万KW重水炉では年間66.6PBq(ペタベクレル)に達する。このトリチウムはそのまま環境に放出されると影響が大きいので,劣化重水を貯蔵したり,トリチウムの回収を行うなどして放出低減化がはかられている。なお高温ガス炉でも3He(n,p)3Hによりトリチウムが生成する。 再処理工場において核燃料の切断,溶解のさいそれから出たトリチウムは,例えば湿式Purex法処理ではその約1/3~1/4が水蒸気となって放出され,他は液体廃棄物となる。 以上のような原子力施設のほか,トリチウム利用施設,標識化合物製造施設なども環境へのトリチウム放出源であり,これに将来はプラズマ核融合施設が多量のトリチウムを取扱う施設として重要となると考えられる。 以下このような種々の成因により生じたトリチウムが各種の環境にどのように分布し挙動しているかを,従来からの調査砺究の結果のほかに,昭和58年度からエネルギー特別研究(核融合)の一環としてはじまった環境トリチウムの測定とその動態に関する総合研究班の成果もまじえ,また,事故放出の場合の環境影響の事例にも言及しつつ述べてみよう。 2.環境トリチウムの分布と挙動  まずノルウェー産重水に濃縮されたトリチウム放射能の発見により環境トリチウムを確認したLibbyらの研究室は1953年より精力的に雨水,雪,陸水,海洋水さらに年代もののブドウ酒などを対象に環境トリチウムの測定をはじめた7)。そして1953年代の試料では雨水数0.1Bq/L(ベクレル/リットル),湖水,海水数0.01Bq/L(ベクレル/リットル)の値を得ており7),そのなかには阪大菊地正士教授から提供された1953年の神戸の雨水について6.5±0.4TU(約0.78Bq/L)の値もあり,わが国の核実験による影響をうける以前のトリチウムのレベルとして注目したい。しかし1954年2月~3月太平洋エニウェトックで行われたCastle熱核爆発実験(核融合17.5Mt,核分裂29.6Mt相当)の影響をうけて同年3月19日からのシカゴの雨水トリチウム濃度は急上昇し,4月末には数十倍に達している。その後の世界でのトリチウム雨水濃度の変動は図1にすでに示したとおりである。 以下環境各圏別にトリチウム濃度とその動態についての状況を述べてゆこう。 (編者注) 1pCi/L(ピコキュリー/リットル)=0.037Bq/L 2.1 大気中のトリチウム  その成因が宇宙線でも,核実験でも,成層圏に注入されたトリチウムの一部は酸化されて水の形(HTO)となり,約1年の平均滞留時間ののち,対流圏に移動し,水文学的循環を行う,しかし最初の環境トリチウム発見が液体空気分留のHe-Ne部分中の水素ガスの形でなされたことからもわかるように,大気中には水素の化学形(HT)のものもある。さらにメタン(CH3T)など有機物の化学形をとるものもあり,これらの化学形のものも1954年ごろからの核実験により増加したとの報告がある8)。 経年的に大気中のこれらの化学形を弁別測定した研究例は少なく,わが国においては前記研究班の仕事ととして九大および新潟大理学部および動燃において大気申のHTOとHTの弁別測定が行われ,さらに九大においてはそれ以外のCH3Tとみられる化学形の測定も行われた。 図2はその結果を示す。この結果からわかるようにHTO化学形のものは当然湿気の多い夏期に,大気1m3あたりの濃度(Bq/m3)が高く,かなりの季節変動があるがHT濃度およびCH3T濃度はいずれも年間大きな変動はなく,それぞれ約0.044Bq/m3,0.010~0.017Bq/m3である。このようなHTO濃度が夏期に高く,一方HT濃度は年間あまり変化しないという傾向は新潟大および動燃東海のデータでも同じようにみられる。とくに天燃レベルのHT濃度の変化が少ないことは,トリチウムを水素ガスとして取扱うプラズマ核融合施設周辺のモニタリングのさいは施設寄与を判定するためには都合がよい。なお大気中でのHTの酸化によるHTOへの転換速度について今後さらに検討を要するが,あまり早くないとの推定がある。 その証拠として各化学形の比放射能が下記のようにかなり相異することもそれを裏付けるものである。  HT;約106TU(大気中のH2体積濃度約0.5ppm) CH3T;約4×104TU(大気中のCH4体積濃度約1.3~1.6ppm) HTO;約10~70TU(湿度4~25g/m3)  この様に比放射能が異なるものが大気中で共存することは,同位体交換の速度が大層おそいことを示すものである。 なお天然の環境トリチウムの全量を100%とすれば,HTO化学形で地表の水文圏に存在するものが90%と最も多いが,大気圏でも,成層圏にHTO 10%,HT 0.004~0.007%,対流圏HTO 0.1%,HT 0.02~0.2%,CH3T<0.04%との推定もなされている。 ある地点の対流圏水蒸気を経日的に連続的に採取して測定していると,前線通過などによる風向,風速など気象要因の変化によってトリチウム濃度がかなり変化することが研究班の一成果として報告されており,その地点の水蒸気気団の由来と関係すると考えられている。 事故放出などによりどの程度大気中水蒸気のトリチウム濃度が上昇し,それがどのように変化したかの例として,図3に米国Savannah River Plantの例を示す。同所では1974年5月2日トリチウム処理施設でパイプの故障がおこり17.7 PBq(ペタベクレル)のトリチウムガスが高さ60mのスタックを通じて放出され,HTO/HT実測比は0.0023であった。なお1975年の平常放出全量は11.3 PBq(ペタベクレル)(86%がHTO,14%がHT)であるが,この年の12月31日夜には6.73 PBq(ペタベクレル)のトリチウムが事故放出された(99%はHT)。 これらの事故の影響とその減少が,10Kmおよび40Km地点で採取された大気水分および野菜水分のトリチウム濃度にうかがわれる。 2.2 降雨(雪) 雨水についての環境トリチウムの継続測定は前述したようにまずシカゴ大学の研究室においてなされ,その後原水爆実験がさかんになるとともに,世界各国の関心の的となり,1961年からは国際原子力機関(IAEA)が世界気象機構(WMO)と共同で全世界的規模で降水中のHTO濃度のデータを収集し,その結果を発表しており,図1下部に示したのもその一例である。 わが国でも1962年当時大阪市大の西脇,河合によって1957年の大阪市降水を濃縮して測定した結果が発表され,さらに理研高橋らは1961年からの東京,高知,新潟の降水について測定し,学習院大の木越は年輪試料をもとに間接的に1954年以前にさかのぼるデータを推定した。その後わが国で111Bq/L以上の最高値が1963年にみられ,気象研や近畿大でも継続測定データが出された9)。さらに近年は低バックグランド液体シンチレーション測定装置の普及とともに,放医研や原子力施設のある各県の衛生研究所なども降雨中のトリチウム濃度を測定し,前記研究班でも諸大学が日本各地で雨水のトリチウム測定を行い,気象変化にもとづく解析などが試みられつつある。これまでの結果の要点をまとめると下記のごとくである。 (1)経年変化;北  (1)経年変化;北半球では1963年の最高値以来,注入トリチウムは次第に海洋等に拡散してゆくため,雨水中濃度はほぼ約1年のみかけの半減期で約5年間は減少していったが(図1),中国やフランスの核実験による付加などの影響により減少のみかけの半減期は5~6年とゆるやかになり,最近まで減少がつづいていることは,わが国各地の観測結果にも認められている。図4には愛知県雨水の経年変化を後述する各河川水の結果とともに示した。  最近はトリチウム放出施設近傍を除けば3.7Bq/Lを越えるデータは少なくなり,原水爆実験以前の天然起源トリチウムレベルにほぼ近い値までになっている。  (2)季節変動;北半球の降水中HTO濃度にはトリチウムレベルが高かった図1の場合にみられるように,  (編集者注) 180pCi/L=6.7Bq/L160pCi/L=5.9Bq/L140pCi/L=5.2Bq/L120pCi/L=4.4Bq/L100pCi/L=3.7Bq/L 80pCi/L=3.0Bq/L 60pCi/L=2.2Bq/L 40pCi/L=1.5Bq/L 初夏6~7月に高く,冬1~2月に低いというかなり顕著な季節変動が認められた。しかしレベルの低くなった最近のわが国のデータをみると,海洋気象等の影響をうけやすいため,それほど顕著な季節変化はみられず,地域的特徴に応じた季節変化,例えば春やや高く秋低い傾向(愛知県)や,初夏に高い傾向(日本海側の新潟,富山,石川の各県)が認められる。  (3)海洋の影響;降水中のHTO濃度は,大陸内地域は海洋地域よりも高いことが世界的に認められており,米大陸でも同緯度地点で比較して,海洋濃度に比し純内陸や大陸東岸では3~4倍あるいはそれ以上,西岸は西風の影響をうけて希釈されるため1.2~2倍というデータがみられる。わが国は海洋中の列島で面積も大きくないのでそれほど大きな地域差は認められず,むしろ気象状況により,気団が大陸起源か,太平洋起源かによって高低の変動がみられると考えられる。  (4)緯度による影響;多数の海洋観測個所の降水中HTO濃度は緯度によって異なり,北半球では緯度約13°ごとに,南半球では緯度約16°ごとに赤道に近づくにつれトリチウム濃度は減少する。なお他のフォールアウトのように中緯度地帯に降下のピークは認められず,極地近くでもHTO濃度は高い。これは極地では成層圏から対流圏への移行が支配的であるとともに,温暖地域では海洋水の蒸発による希釈効果が大きいためと考えられる。なお核実験以前の天然トリチウム濃度も同様の緯度依存性のあることは各地の水や,各地産ブドウ酒などの測定値から推定されている。 なお水蒸気の大気中滞留時間約1~2月を降水トリチウム濃度をもとに求めた例があり,小雨には対流圏下層の水蒸気中のHTO濃度が反映し,中程度や大雨ではこれら水蒸気との交換は無視できるとの見解がある。  (5)施設周辺の降雨によるトリチウムの洗浄沈着;たえずHTOを放出している施設周辺でそれらがどの程度降雨により洗浄沈着するかについての研究班の成果を述べておこう。  図5に示すように茨城県東海村の重水減速研究炉では炉内中性子の2H(n,γ)3H(T)反応によりたえずHTOが生成し,その一部が蒸気として大気放出される。放出源の南~南西方向の約0.5Km~2.0Kmの範囲に降雨採取器を設けて月間降雨を採取し,それを測定して,核実験およぴ天然トリチウム寄与分を差引き,施設由来分の降雨による沈着量量を求めた値をプロットしたのが図5である。なお本図には単位面積あたりの降雨による沈着量を,放出量,観測点の放出源からの距離,降雨の頻度,強度などのパラメーターから求める式をつくり,それを一定地点の観測値にあてはめて比例定数を求め,その比例定数により沈着量の距離依存性を計算した曲線も記入してある。詳細は昭和59年度環境動態研究班報告書を参照されたい。 3.地表水(河川,湖沼)および地下水 降雨量をあつめて地表を流れる河川水さらにその滞留する湖沼水のトリチウム濃度も核実験の影響をうけて上昇し,図4の愛知県河川の例にみるように最近にいたるまで減少をつづけており,そのみかけの半減期は5~6年と見積もられ,その年間変動幅も降水に比し少ない。また同時期の雨水のレベルと比較すると図4でもわかるように最近10年間では一般に河川水の方がトリチウム濃度が高い傾向がある。これは河川水の由来が単にその時期の降水に由来するもののみでなく,核実験による影響の大きかった何年か前の降水が一度地下水として貯留されてのち,再び地表に出て河川水となっているためと考えられ,大河川や高い山に由来する河川ほどこの寄与は大きく,その経年的減少もゆっくりと現われる。なお図6には富山県の河川でかなりの雪の多い高い山岳地帯に源をもつ2つの河川のトリチウム濃度測定結果を示した。これらは最近の同地方の降水のトリチウム濃度の約2倍近くである。しかも季節変化はあまりなく,雪国で河川水の流量が増大する融雪期でもトリチウム濃度低下が認められない。これは融雪期の増水も雪融け水の直接の流入によるのでなく,雪融け水が地下に滲透しそのため地下水が押出されて増水することを示唆する。しかも図6には同一試料水について測定された重水素濃度の標準水との偏差(δD)の測定値も示したが,D/H比は融雪期には少しづつ低下する場合のあることが認められ,これは雪融けがD/Hの大きい低地からD/Hの小さい高地へ移り,それに伴って地下水の流出の行われる場所も低地から高地へその中心を移すことを表わすものとして,単にトリチウムの測定のみでなく,D/H比や18O/16O比などの安定同位体比の測定も同時に行えばトリチウム測定をもととしてより多くの知見の得られることを示す。  (編集者注) 100pCi/L=3.7Bq/L  50pCi/L=1.9Bq/L  湖沼水のトリチウム濃度についても,その表面水の経年変化には河川水と同様の傾向が宍道湖について認められ,一方海岸に開口している島根県中海では海洋水の影響で濃度も低く,また経年変化も少ない。なお360mの深度をもつ北海道支笏湖と,233mの深度をもつ鹿児島県池田湖について,トリチウムの深度分布が九大の研究者により調査されたが,後述する深海水のような大きな濃度変化はなく,これら湖水の循環がトリチウムの半減期よりはるかに短い期問内に行われていることが認められている。ただし表面水にはやや変動が認められている。 一方,地下水のトリチウム濃度は井戸の水を供給している地層の深さとその地域の地質構造に関係がある。その実例として金沢市の井戸水について行われた私共の研究成果を図7に示そう。同市小立野台地の1Km範囲内の異なる深度に採水のためのストレーナーのある6つの井戸と,同台地の両側を流れる浅野川1,犀川の水のトリチウム濃度の状況は同図右下の図にみるようにかなりの変動がある。最深部(No.2)の水は電解濃縮を行ってもそれほどトリチウム濃度の上昇がみられぬほどトリチウム濃度は低く,トリチウム測定のバックグランド水として使用されているが,ほぼ同じ地点で深度60m程度からの水(No.1)はトリチウム濃度が約2.3Bq/Lと高く,このことはほぼ同一深度の水(No.4)についても認められた。一方,深度10m程度からの水(No.3,No.5)は約1.1Bq/L前後であり,山から水を供給されている洞川水のトリチウム濃度はそれよりやや高めである。このことから浅層地下水は現在の降雨を貯留したものであり,一方中層地下水は核実験の影響をうけて降雨中のトリチウム濃度の高かったころの水がなおかなり貯留していること,さらに深度の深い深層水はトリチウム放射性壊変による減衰のためトリチウムがほとんど認められなくなるほど古い水であることがわかる。このことはこの地域のボーリング・コアーによる不透水粘土層の存在等の地質構造の解析,さらに融雪用の井戸水も含めた広範な地下水の調査によっても裏付けられており,その詳細は別に報告する10)。  このように地下水のトリチウム濃度のある地域での深度別の研究は,その地域の水文学的状況を解明するためのかけがえのない手がかりを与える。このことは,将来反応プラズマ・核融合実験施設など大規模なトリチウム取扱施設が建設されようとする地域では,なるべくその地域と周辺全般の種々の深度からの地下水をボーリング等で採水し,その特性を把握しておくことが,環境モニタリング,緊急事態での対策確立のため望ましい。  定常的に運転を行っている重水減速原子炉周辺では,環境にある程度のトリチウムが注入されることはやむをえず,環境モニタリングには図5に示したような降雨による洗浄沈着量の直接観察のほかに,その施設周辺レベルの分布を知るには,井戸水などの浅層地下水を数多く採水してそれらのトリチウム濃度を測定することが有効である。そのわが国での実例として東海村原研南南西方向の状況を図8に示しておこう。なおこの地域の地下水は私共研究班のトリチウム測定法のク9スチェックのためにも使用された。昨年訪れた中国北京の原子能研究所では1958年から運開した重水炉(1980年10MWから15MWに増強)があり,1978年まででもその5トンの重水に0.078TBq/Lのトリチウムが蓄積しており,平常時のモニタリングのほか,事故時の貴重なデータも得られている。なお,スイスの夜光時計用のトリチウム取扱工場では1983年12月13~14日,約0.019PBq のトリチウムの放出事故(平常時でも排水濃度は数3.7Bq/L 以上と高い)があった。それがラィン川の支流の山域の地下水や本流の表面水のトリチウム濃度をどのように変動させたかのデータを,今夏訪欧のさいその研究に参加したベルン大の研究者から提供されたので,その要点を図9,10により示しておこう。 4.沿岸海水および海洋 地球上の水の97.5%を貯蔵する海洋のトリチウム濃度は,河川水の影響の程度,海洋水の深度による混合と貯留減衰時間の相異によって大きな影響をうける。表面水ではかなり希釈混合がはやく行われ,沿岸海水でもよほど河口に近いものを除けばそのトリチウム濃度にあまり大きな相異がないことが,九大の研究者の日本列島沿岸海水の広範な調査で認められ,1983年度には0.48~1.0Bq/L(平均0.77±0.18Bq/L )である。なお放医研の研究者による1971年から1980年にかけての一定箇所の沿岸海水のトリチウム濃度の経年変化では約1.9Bq/Lの値が約10年間に約0.74Bq/L まで漸減したことが報告されており,それに比し同年度の河川水や湖水の値は約3~5倍高い値を示している。 一方,太平洋,大西洋など海洋水の深度別トリチウム濃度の変化も研究されている。その結果,水深50    ~100mまでの混合層の水と,それより深い海水温がかなり低温となる温度躍層(Thermocline)の水は,相互に混合しにくく,より深海層の海水と混合層の海水の上下混合を妨げているため,南北の高緯度地帯以外では,トリチウム濃度が海水の深度とともにトリチウムの放射性減衰のためかなり低下していることが知られている。 このような海洋水のトリチウム濃度の深度変化とその各海域的動態は,海洋科学的研究として興味あるのみならず,原子力施設等から海洋に放出されたトリチウムの挙動を考える場合に重要である。 5.陸上の動植物のトリチウム濃度 トリチウム取扱施設や生成施設周辺のモニタリングや食物連鎖を通じての生物影響を考える場合には,野菜など食用植物もふくめた各種植物の付着水,含有水分,さらに有機成分のトリチウム濃度,さらに人尿等もふくめた動物についてのトリチウム濃度の研究も重要である。 環境モニタリングの目的で,松葉の付着水が,環境のトリチウム汚染の指示として有効に利用できるとの放医研等の研究もあり,また飲料水に比し,人尿のトリチウム濃度が高いとの報告もあるが,有機成分混入のための疑似計数など測定面でなお検討する点もあり,今後の研究が期待されている。また生物機能における同位体効果のため有機成分にトリチウムの濃縮がみられるかどうかなど,生物を含めた広義の環境トリチウムの動態研究についてはなお研究すべき課題が多く,現時点では簡単にまとめるには尚早と考えられる。               参  考  文  献1)阪上正信:名古屋大学RIセンターTracer 9(1984)18.2) V.Falting and P.Harteck:Naturforsh.5A(1950)438.3) A.V.Gross et al.:Science113(1951)1.4) S.K.Aegerter  et al.:IAEA,STI/PUB152(1967)49.5〉 B.J.Teegarden: J.Geophy.Res.72(1967)4863.6)J.A.Miskel: Tritium(A.Moghissi and M.Carter Eds,Messenger Graphics,Phoenix and  Las Vegas,1973)p79~85.7)阪上正信:環境トリチウムの測定とその動態に関する研究資料要覧(昭和58年科学研究費補助金  印刷,金沢大・低レベル放射能実験施設,1984)p3~5.8)E.A.Martell:J.Geophy.Res.68(1963)3759.9)文献7)p.6~10.10)山田芳宗,翫幹夫,加藤岩夫,阪上正信:地球化学(日本地球化学会)に投稿中。

福島県の子どもの甲状腺がん確定6人増え18人に 疑いは25人 2013年8月21日各紙朝刊

 第12回「福島県県民健康管理調査」検討委員会は、2013年8月20日、子どもの小児甲状腺がんの患者が6人増え18人に、小児甲状腺がん疑いが10人増え25人になったことを発表しました。  資料2 「甲状腺検査」の実施状況及び検査結果等について<PDFファイル2.6MB>  各紙朝刊はこのことを報じていますが、非常に小さい扱いです。東京新聞でも3面、朝日新聞では38面、毎日、読売はベタ記事扱いです。                                              福島の子どもたちをこれ以上、高放射能汚染地帯にほっておくことができません。  福島市の子どもで検査を受けた46,805人から小児甲状腺がんおよび疑いの患者が11人も出ています。郡山市でも検査を受けた50,997人から小児甲状腺がんおよび疑いの患者が8人も出ています。ところが、原発事故後埼玉県に全村避難した双葉町では検査を受けた903人から小児甲状腺がんおよび疑いの患者が誰も出ていません。もし、このまま双葉町から小児甲状腺がんの患者が出ず、福島市や郡山市などから出た場合は、ヨウ素131の初期被ばくだけでなく、高線量放射能汚染地帯に生活することによる、内部被ばく、外部被ばくによる影響と考えるべきではないでしょうか。2ミリシーベルト未満だから原発事故による小児甲状腺がんではないというのは明らかに間違っています。理論が破綻しています。そうではなくて、初期被ばくが決定的であること。ヨウ素131を中心とする放射能プルームを吸ったか、吸わなかったかが決定的だったのではないでしょうか。  ただちに高放射能汚染地帯から子どもたちを始め、住民を避難させるべきです。  福島県や国は、年間100ミリシーベルトまでは安全とする専門家の「放射線 出前授業」をただちにただちにやめ、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアの被害を体験し、低線量被ばくで何が起きるかを学んだ専門家を現地に派遣すべきです。    

チェルノブイリ原発事故 イギリス、ドイツ、ギリシャで0.067ミリシーベルトで乳児白血病が増えた 長山淳哉『胎児と乳児の内部被ばく』(緑風出版 2013年7月10日)

 チェルノブイリ事故当時とそれ以外の時期における、イギリス、ドイツ、ギリシャにおける乳児白血病の患者数  クリストファー C.バズビーが2009年に『チェルノブイリ事故による非常に低レベルの胎児性被曝によるヨーロッパにおける乳児白血病の増加と、それがもたらす現在の放射線リスクモデルへの疑問』を書いています。                                Very Low Dose Fetal Exposure to Chernobyl Contamination Resulted in Increases in Infant Leukemia in Europe and Raises Questions about Current Radiation Risk Models   Christopher C. Busby  International Journal of Environmental Research and Public Health 2009, 6, http://www.mdpi.com/1660-4601/6/12/3105  この論文の分かりやすい説明は、長山淳哉『胎児と乳児の内部被ばく』(緑風出版 2013年7月10日)p.208~216にあります。是非、お読み下さい。  結論は、胎児がたった0.067ミリシーベルト追加で被ばくすると、乳児白血病の子どもが43%も増えるということです。国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護モデルは破綻しています。LNT仮説(100ミリシーベルトを超えると健康被害が線量に比例して増えていく。100ミリシーベルト以下でも線量<ミリシーベルトのこと>に比例して数は少ないが健康被害が起きるだろう)は間違いです。  クリス・バズビーは国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護モデルは少なくとも100倍、多ければ1000倍間違っている、と結論しています。  上記長山淳哉『胎児と乳児の内部被ばく』にも、国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護モデルの間違いが詳しく解説されています。  年間1ミリシーベルトは許容できる被ばく線量ではありません。生殖期を迎える子どもたち、妊婦、乳幼児を持つお母さん、お父さんの被ばく線量は0.1ミリシーベルトでも高すぎると思います。 長山淳哉『胎児と乳児の内部被ばく』緑風出版 2013年7月10日刊

かつての埼玉県の自然放射線は0.034マイクロシーベルト/時

 文部科学省や埼玉県は「埼玉県の通常の放射線の範囲は0.031~0.060マイクロシーベルト/時の範囲である」と言っています。毎日新聞で報道される、例えば「埼玉県さいたま市の放射線量0.054マイクロシーベルト/時」は通常の範囲内なのでしょうか?  これはまったくのうそです。かつての埼玉県さいたま市の自然放射線の平均のレベルは0.034マイクロシーベルト/時でした。ですから、0.054は通常の約1.5倍。0.068もあれば通常の2倍です。0.10は自然放射線の3倍ということになります。  以下が原発事故前1年間の埼玉県の放射線量の最高値、最低値、1日の平均値です。この数値をていねいに見ていくと、1日の平均値は0.032~0.036の範囲に95%が入ります。文科省や埼玉県が行っている、「埼玉県の通常の自然放射線の範囲は0.031~0.060」の0.060マイクロシーベルト/時は、1年間でたった1度、2010年12月8日の最高値ただ1つだけです。これを通常の自然放射線の範囲とすることは無理があります。原発前1年間のデータを見ても、通常の放射線の範囲は「0.032~0.036マイクロシーベルト/時」です。つまり、平均値を取れば0.034マイクロシーベルト/時です。       そして、旧科学技術庁(文部科学省に放射線モニタリング業務は移行)が日本全国の小中高校等に放射線量計「はかるくん」を無料で貸し出しています。そのデータを集め、各都道府県の自然放射線の平均値を出しています。以下は1994年の「はかるくん」による自然放射線の平均値です。みなさんの地域の自然放射線が原発事故前にいくつだったのか、ご確認下さい。そして、その2倍、3倍であれば、明らかに異常です。自然放射線の10倍もあれば、いずれ健康被害が出てもおかしくないレベルであることにもご注意下さい。埼玉県の自然放射線は1994年ではここでも0.034マイクロシーベルト/時です。  政府は空間線量0.23マイクロシーベルト/時で「年間1ミリシーベルト」に相当する、と言い、この0.23マイクロシーベルト/時を超える地域を「汚染状況重点調査地域」として指定し、除染に対する補助金を出しています。  しかし、「空間線量0.23マイクロシーベルト/時で年間1ミリシーベルトに相当する」というのはでたらめです。本来、外部被ばくと内部被ばくの両方の合計で1ミリシーベルト以上の被ばくをさせてはならない、にもかかわらず、外部被ばくだけで1ミリシーベルトを想定しているからです。  実際には1kmメッシュで土壌測定を行った常総生協のデータを見ると、空間線量0.23マイクロシーベルト/時での土地にはセシウム134、137合計7万~7万8000ベクレル/m2の汚染があります。スウェーデンのマーチン・トンデルは、セシウム137で10万ベクレル/m2のスウェーデン西北部の汚染地域で1988年から1996年の9年間で発ガン率が11%増だったという報告があります。 常総生協 土壌沈着量測定結果 スウェーデンでセシウム137 10万ベクレル/m2の地域でガン発生率が11%増えた マーチン・トンデル論文    空間線量0.23マイクロシーベルト/時はこのセシウム137で10万ベクレル/m2の7割に相当する可能性があり、除染基準ではなく、住民避難の基準とすべき数値です。 原発事故前の自然放射線の調べかた 文部科学省 日本の環境放射能と放射線 http://www.kankyo-hoshano.go.jp/kl_db/servlet/com_s_index →4つあるタブのうち「データを活用する」をクリック →「環境放射線データベース」をクリック →「身の回りなど一般環境」をクリック →1調査対象「大気」 2調査年度「 」…ご自身で選択 3調査地域「 」…ご自身で選択 「次へ」をクリック →4調査カテゴリー「モニタリングポスト」 5調査試料「モニタリングポスト」ー自動的に選択されます。 「次へ」をクリック  →「検索条件の確認」を確認し、「検索」をクリックで見られます。        

放射線医学総合研究所 「被曝早見表、説明せず改訂」 朝日新聞2013年7月24日夕刊

 放射線医学総合研究所が誰にも説明せずに、こっそり「被曝早見表」を改訂していました。朝日新聞2013年7月24日夕刊 1面に掲載された記事「被曝早見表、説明せず改訂」放医研 周知不足で混乱。  また、翌日7月25日の朝日新聞朝刊7面にもほぼ同様の記事が載りました。 「被曝線量の数値、混在 放医研『早見表』改訂」  この2つの記事で驚いたことに、自然放射線、特に食品から受ける被ばく線量がこれまでの3倍の数値に変更されています。これまでは「食品から0.35ミリシーベルト」と書いてあったのが、いきなり「食品から0.99ミリシーベルト」と3倍にもなっています。2011年3月11日の東日本大震災による、東京電力福島第一原子力発電所事故によって大量の放射性物質がまき散らされました。このため1日にセシウム137などを3~4ベクレル(もっと少ない想定か?)摂取することから内部被ばくの影響が、自然放射能であるカリウム40から受ける内部被ばくの影響の2倍くらいであることと放射線医学総合研究所が考えている、ということです。すなわち、食品中の人工放射能であるセシウム134、137、ストロンチウム90などが東日本産の食品中に含まれている以上、食品から受ける内部被ばくの影響はこれまでの3倍になったと放医研も考えている、ということです。  ただし、放医研は自然放射能カリウム40が出すベータ線、ガンマ線の影響とセシウム134、137が出すベータ線、ガンマ線の影響をほぼ同等と考えています。  これはまったくの間違いです。カリウム40は地球誕生以来生物の進化の過程で付き合ってきた放射性物質です。現在ではカリウムが100gあるとすると、その中に放射線を出すカリウム40が0.0117g含まれています。生物はこの放射線を出すカリウムが1カ所にたまらないように、絶えず新しいカリウムを取り入れると同時に古いカリウムを排出する仕組みを作り上げています。これを「代謝」と言いますが、カリウムにはこの代謝経路が7つくらいある、と言われています。  ですから、体重60kgくらいの大人では体内にだいたい4000ベクレルのカリウム40があると言われていますが、その量は4000ベクレル程度でそれ以上増えていきません。  ところが、このカリウムと似ているセシウムはカリウムと同様に植物、そして動物の体内に取り込まれていきますが、放射線を出すセシウム134、137が全地球上にばらまかれたのは1940年代のアメリカによる原爆開発とそれに伴う原発の開発以降のことです。  地球上の生物がこの放射性セシウムと付き合うのはたかだか70年くらいのことに過ぎません。カリウムのように確立された代謝経路がないのではないでしょうか。  事実、きのこ、川魚、山菜など放射性セシウムをためやすい食品を何も気にせず食べている人の中には放射性セシウムが数万ベクレルたまっていたことが報告されています。(南相馬市総合病院で勤務する、坪倉正治氏が行った測定では、4名の高齢者の方から1万ベクレルを超える数値、そのうち1人は、2万ベクレルを超えた数値が出ました。2012年7月)  また、セシウム137はベータ崩壊してバリウム137になりますが、細胞内に取り込まれたバリウムが毒性を持っていて、それが放射線ととに生物に悪影響を及ぼす可能性をユーリ・I・バンダジェフスキー博士が指摘してます。  自然放射能カリウム40とセシウム137をほぼ同等に扱う、放医研の内部被ばく影響のモデルは間違っています。少なくとも300倍近い影響の評価ミス(セシウム137の評価は実際には放医研の300倍近いのでは)があるのではないでしょうか。(ECRR2010勧告)  また、これまで広島、長崎の被爆者の寿命調査(LSS)に基づき、「100ミリシーベルト以下ではがんの過剰発生は見られない」と放医研は言ってきました。この放医研の学説が日本中の「放射線の専門家」の寄りどころになって、「100ミリシーベルトまでは安全」と多くの「放射線の専門家」たちが日本全国津々浦々で講演してきました。  これが突然 「100mSv以下ではがんの過剰発生がみられない」 ⇒「100mSv超ではがん死亡のリスクが線量とともに徐々に増えることが明らかになっている」 に変わっています。これは100ミリシーベルト以下の低線量でのがん罹患率について否定することができなくなったからではないでしょうか。福島の子どもたちは誰1人100ミリシーベルト浴びた者はいないことになっています。しかし、すでに12名の小児甲状腺がんの患者と15名の疑いの子どもたちが出ています。事実が「100ミリシーベルト以下は安全」理論を否定しています。  放医研はベラルーシ、ウクライナ、ロシアの医師たちに学び、低線量被ばくの真実について国民に正しく伝えるべきです。                              

千葉県産の魚はどれくらい放射能汚染されているか?

 厚生労働省の食品中の放射性物質の検査 全国の過去の検査結果(月別)から、数値が検出されたデータのみを拾い上げ、品目ごとに整理しました。  千葉県産の魚はセシウム134、137合計で数ベクレル/kg汚染されているものがあります。日本政府の基準値がセシウム134、137合計で100ベクレル/kgであるため、こうした魚は市場に流通しています。  食品と暮らしの安全基金の小若順一氏らはチェルノブイリ原発事故の被害に苦しむウクライナに調査に入りました。そして、セシウム137汚染が1.1ベクレル/kg程度の食品を継続的に摂取することで、手足や腰が痛い、頭痛がする子どもや大人が出ていることを報告しています。 『最新|第4回ウクライナ調査報告』……全文無料で読めます。http://tabemono.info/report/chernobyl.html  子どもについては0ベクレル/kgのものを。大人でもセシウム134、137合計で1ベクレル/kgを超える食品を取るべきではありません。 千葉県 食品 放射能汚染データ 2011年 厚生労働省 千葉県 食品 放射能汚染データ 2012年 厚生労働省 千葉県 食品 放射能汚染データ 2013年 厚生労働省    

かけはし甲状腺プロジェクト ユニコーン創刊号

ユニコーン(福島原発健康被害児・者の会)創刊号が準備されています。 これから健康を守るためにすること 1.関東圏も含めて、予防のために集団保養・疎開のシステムをつくること 2.健康診断を最低でも30年以上続けて体制の構築(厚労省がすること) 3.強制移住は国の責任で 福島をはじめ関東の被災者・児童の医療健新・疎開などに使用するための募金のご協力をお願致します。 ユニコーン(福島原発健康被害児・者の会) 連絡先:札幌市中央区南9条西3丁目1-11-601 〒064-0809     チェルノブイリへのかけはし     TEL (011)511-3680     FAX (011)252-7787 募金の振込先     ゆうちょ銀行 かけはし甲状腺プロジェクト     支店名 九〇八(キュウゼロハチ) 普通 5104399 下にpdfもつけました。ダウンロードしてお使い下さい。 ユニコーン 甲状腺プロジェクト 20130713 p1と4 ユニコーン 甲状腺プロジェクト 20130713 p2と3        

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