内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
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内部被ばくと健康被害

独科学者プフルークバイル:首都圏の放射能汚染調査後、東京オリンピック開催決定を非難

独科学者プフルークバイル:首都圏の放射能汚染調査後、東京オリンピック開催決定を非難 ◆ドイツ放射線防護協会会長のセバスチアン・プフルークバイル博士(ドイツ放射線防護協会会長)が、首都圏の放射能汚染調査後、東京オリンピッ ク開催決定を非難した。************************************************************************************* 福島原発事故 − 高濃度の放射能を含む黒い粉末を東京で発見 ブログCanard Plus Tomos Blog よりdimanche 25 mai 2014 (2014年5月25日 日曜日) 独科学者プフルークバイル:首都圏の放射能汚染調査後、東京オリンピック開催決定を非難 福島原発事故 − 高濃度の放射能を含む黒い粉末を東京で発見 原典 Deutsche Wirtschafts Nachrichten, 2014年4月2日 ドイツの物理学者セバスチアン・プフルークバイルが、福島事故後の日本を調査して警告を発している。 首都東京でプフルークバイルは今まで一度も見たこともない現象に出会った: 道路上に、メルトダウンによって発生したと考えられる放射性のダストを発見したのだ。 政治、マスコミ、そしてマフィアは手に手を取り合って福島原発事故の被害を隠ぺいしている。 日本を訪れたドイツの物理学者 セバスチアン・プフルークバイルは、原発事故による惨事が、 日本全土におよんでいることを見てとった。 そして、2020年のオリンピックを東京で開催することに決定したのは、大きな誤りだったと語る。 今では東京にも、メルトダウンから発生したと考えられる放射線が存在するのだ。 プフルークバイルは、”不安などという生易しいものではないような”測定結果も存在すると、当紙に語った。 首都東京で起こっている不穏な現象とは: 「オリンピックを日本で開催する決定はとんでもない誤りだった。 選手たちは、放射能汚染が激しい東京の北部に宿泊させることが計画されている。まったく狂った条件だ。 検出される測定値は不安などというものではない。 そうした数値は公園や遊技場、家の屋根などから 偶然に見つかったものだ。 数日前に私が日本を再訪したとき、今まで一度も見たこともない現象に出会った。 道路上に、粉末状の黒い、乾いた水溜りに似た残滓が見られるのだ。 この粉末の放射線量は非常に高く、メルトダウンから発生した残留物であるとしか考えられない。 いかにして東京にこうした粉末がたどり着いたのかは今のところわかっていない。 しかし地べたで遊んだり、転んだりすることが多い子どもにとっては、大変な危険だ。 また、除染を実施した場所も、しばらくすると再び放射能汚染することが繰り返し確認されている。 森林に覆われた山々の放射能を取り除く方法は誰にもわからない。 雨だけでなく、雪解けもまた、谷や河川に汚染水を運ぶ。」 今後、膨大な量の汚染水を 太平洋に放出させるという東電の発表に対するセバスチアン・プフルークバイルのコメント: 「毎日400㎥の汚染水が太平洋に流出している。 だが誰も知られない事実がまだある:同量の汚染水が毎日、地下水を通して太平洋に流出していることだ。 つまり、合計800㎥の放射能汚染水が毎日、環境に流れ込んでいることになる。 この状況はすでに三年間続いている。それがどのような影響を持つのかは、まったく予想が不可能だ。 残念なことに、地元の漁師たちは、基準値をはっきり下回る汚染水ならばと、 太平洋への放出に同意してしまった (詳しくはこちら)・・・。 自分たちの生計にかかわることとなれば、漁師たるもの闘うのが当然だと思われるのに、 線量が微量といえども太平洋への汚染水の放流を認めてしまうとは、じつに軽率だ。」 太平洋に放出する汚染水はフィルターを通すという東電の発表について: 「汚染水からセシウムを濾過することは可能だが、そのための装置はほとんど故障している。 危険なストロンチウムの除去は、まったく不可能だ。 安倍首相は、2020年のオリンピック開催地が選ばれる前に、福島原発はコントロールされていると宣言した。 しかし決定後、彼は科学界に対してストロンチウムの除去法を尋ねた。 実際には世界のどこにもまだ科学的な解決策はないのだ。このような状況は、歴史的にも例がないからだ。」 福島事故現場作業員の労働条件について: [...]

川内原発を再稼働させてはいけない!6.13(金)am9:00鹿児島県庁に

川内原発を再稼働させてはいけない!6.13(金)am9:00鹿児島県庁に集まりましょう。 川内原発を再稼働させてはいけないと思う皆様へ  6月13日、鹿児島県議会初日です。川内再稼動を目の前にして、それを許してはならないという声を、県議会に届けます。 この間集まった、およそ10万人の署名も知事に届けます。 火山問題、基準地震動問題、規制委員会も、全部いい加減なままに進もうとしています。  平日ですが、6.13(金)am9:00、鹿児島県庁に集まりましょう。 全国から1000人が結集します。 反原発・かごしまネット ——————————–図書出版南方新社向原祥隆〒892-0873鹿児島市下田町292-1TEL099-248-5455FAX099-248-5457info@nanpou.com——————————–

【35カ月目の福島はいま】体調悪化は本当に被曝と無関係?闘い終わらぬ郡山市の夫妻 民の声新聞 2014年2月2日

【35カ月目の福島はいま】 体調悪化は本当に被曝と無関係?闘い終わらぬ郡山市の夫妻 出典:鈴木博喜 民の声新聞 被曝から子どもを守ろう。民を守ろう。その一念で書き続けます    2014年2月2日版  鈴木博喜さんの許可を得て、全文を転載させていただきます。 夫婦に次々と起こった体調悪化に、妻の疑問はふくらむばかりだった。「本当に被曝と無関係なの?」。依然として高濃度汚染が解消されない郡山市で、Aさんは足の痛みと闘いながら東電への訴えを続けている。除染が済んでいない自宅の雨どい直下は16μSv/hを超す。落ち葉掃除が日課だった夫は白内障を患った。2人の子どもは関西に逃がしたが、のう胞や結節が見つかっている。数十年後でもいい、死後でもいいから因果関係を認めさせたいとAさんは語る。 【夫は白内障、妻は足の骨にのう胞】  郡山駅から路線バスで西に約20分。県立郡山高校の校庭では野球部のバッティング練習が行われていた。金属バットが乾いた打球音を発し、別の建物からは吹奏楽部の演奏が漏れ聞こえてくる。震災前から続いているであろう、何気ない日常の光景。ただ一つ異なるのは、校舎の周辺や隣接する西部公園で依然として0.3μSv/hの放射線量が計測されることだ。もうすぐ原発事故から丸3年になるが、飛び交う放射線が子どもたちの健康を害する恐れは消え去っていない。 近所に住む50代のAさんは、県民健康管理調査の結果に釈然としない毎日を送っている。やはり50代の夫と日々の事故後の行動パターンがほぼ同じだったとして、似通った内容の問診票を一緒に提出した。しかし、問診票から推計された外部被曝線量は、あまりにもかけ離れていた。Aさん自身は「4カ月間で1.8mSv」と算出されたのに対し、夫の推計値は「2週間で0.8mSv」と記載されていた。なぜ算出期間が大きく異なるのか。どちらが本当の数値なのか。Aさんは福島県立医大の問い合わせ窓口に電話をかけたが、木で鼻を括ったような回答しか得られなかったという。「一件一件調べられないとのことでした」。 夫妻の体調に異変が生じ出したのは2012年9月頃。2人とも身体に赤い発疹のようなものができるようになった。血液検査をしてもアレルギー反応は認められない。落ち葉の掃除が日課だった夫は昨年3月、甲状腺に結節3つあることが判明、関西の病院で細胞診を受けた。その際、電話予約をしようとすると「福島の方は福島で検査を受けるように」と断られ、ようやく検査を受けられたという。夫はその2ヶ月後から目がかすみ始め、12月に白内障と診断。手術を受けることになる。 Aさんは、足の骨にのう胞が見つかった。初めは左足だけだったが、やがて両足にのう胞が認められるようになった。若い頃、スポーツに打ち込み国体にも出場経験があるAさんは、股関節の病気を患いながらも震災前は走っていたという。それが今はじっとしていても痛みが走り、歩くには杖が必要になった。医師に相談しても加齢が原因だと言われる。被曝の可能性を問うと「そんなこと無い無い」と一蹴されたという。 「今までのう胞が見つかることは無かったのに、どうして元々悪かったからのう胞が出来ただけと言い切れるのでしょうか。被曝の影響ではないかと不安でたまりません」 (上)夫婦のデータが綴じられた「県民健康管理ファイル」(中)Aさんの推定外部被曝実効線量は4カ月間で1.8mSv(下)だが、夫の線量はわずか14日間で0.8mSvと記載されている 【わが子の避難と苦い記憶】  東電に治療費を賠償請求したが、半年後の回答は「却下」だった。理由は「郡山市だから」。電話で再三、問いただしたが「20km圏内と郡山市は違う」「既に避難費用として賠償金を支払っており、治療費もその中に含まれる」と一点張りという。たしかにAさん一家は賠償金として1人8万円、計32万円を受け取ったが、当時の書類にも治療費を含む旨の文言は無い。コールセンターのオペレーターに「これだけ放射線量が高いのに、20km圏内と何が違うのか」と尋ねても明快な解答は無し。「汚染された土を郵送すれば証明できますか?」と迫ったが、「できかねます」と上司に取り次ぐことさえしてもらえなかったという。 「郡山高校の側溝は事故後、100μSv/hもありました。自宅の花壇も4μSv/hに達していた。それなのに、なぜ20km圏内と区別するのでしょうか」。Aさんの怒りはもっともだ。 2人の子どもは2011年3月17日、兵庫県内のAさんの実家に逃がした。当時、関西電力関係の仕事を請け負っていた友人からは「子どもだけでも早く逃がせ」と電話で言われていた。ようやく見つけた2席分の航空券を確保し、福島空港から羽田経由で伊丹空港へ。福島空港には、キャンセル待ちの人々が、毛布にくるまるようにしていたという。 避難後、三重県内の会社に就職した息子は、結婚前に婚約者の両親から検査を求められた。「一人娘だし、相当心配だったんでしょう」とAさん。息子の甲状腺からは数えきれないほどののう胞が見つかったが、血液検査では異常は認められなかった。20代の娘も1.6cmの結節が見つかったが、体調に変化はないという。「私の判断は間違っていなかったんですよ」。Aさんの頬が一瞬だけ緩んだ。 原発事故でよみがえった苦い記憶。小学生の頃、同級生に多指症の子どもが2人いた。母親が広島で被爆。1人の健康手帳には「原爆症」と記載されていたという。当時「ピカはうつる」との誤った認識が定着してしまい、誰も2人に近づこうとしなかった。運動会のフォークダンスでも、2人だけは誰からも手をつないでもらえなかった。教師もそれを咎めない。白内障でレンズの厚いメガネをかけていた同級生。原発事故後に当時の友達と会食した際、1人が「えっ?福島から来たの?大丈夫?」と一瞬だが避けるような仕草をした。「ああと思いました。それと同じですよね。当時、私たちがしていたのは残酷ないじめでしたよね」。 わが子を守ると同時に、次の世代への思い。被曝が遺伝しないと本当に言い切れるのか。Aさんがいち早く子どもたちを関西へ逃がした背景には、当時の贖罪もあったのかもしれない。 (上)いまだに16μSv/hを超すA]さん宅の雨どい直下(中)別の雨どい直下も4μSv/hを上回った(下)自宅からほど近い西部公園では間もなく、汚染された木製遊具が交換される 【数十年後のためにデータ保存】  水俣病など、健康被害が数十年後にようやく認められるケースが少なくない。「私たちも、仮に因果関係が認められるとすれば、死んだ後でしょう。多くの人が亡くなって人数が少なくなってから、ようやく認め始めるのではないでしょうか」とAさん。今できるのは「その時」に備えることだけ、とデータの保存に余念がない。 そして、子どもを連れて避難したいと願う親への金銭的補償が早く用意されることを願っている。「20km圏内の方々はきちんと補償してもらっているのに、どうして自主避難には補償がないのか理解できません。避難に要した実費だけでも補償して欲しいです」。 (了)  

東京第一原発事故前の放射性物質の降下物の最高値と、大人が1日食品から取った放射性物質の最高値

 原子力安全委員会の資料「環境放射線モニタリング指針解説と現行指針解説の対照表」に、1975年~2005年までに、日本全国に降った放射性物質の平均値と、大人が1日食べた放射性物質濃度の平均値が掲載されています。 環境放射線モニタリング指針解説と現行指針解説の対照表 原子力安全委員会  1975年から2005年までの、日本全国に降った放射性物質の最高値は、1986年チェルノブイリ原発事故の当年のセシウム137で10ベクレル/㎡です。ストロンチウム90については、1977年の2ベクレル/㎡から徐々に下がり、チェルノブイリ原発事故当年の1986年に一時的に0.2ベクレル/㎡に上昇しました。  大人が1日に食べた放射性物質濃度の最高値は、大気圏内核実験禁止条約締結(1963年)から12年後の1975年で、セシウム137は大人1日0.22ベクレル、ストロンチウム90は大人1日0.09ベクレル食べていました。  また、チェルノブイリ原発事故後の1987年にはセシウム137は大人1日0.2ベクレル、ストロンチウム90は大人1日0.1ベクレル食べていました。一度の、それも4号機1機の原発事故である、チェルブイリ原発事故後が、1975年と同等のセシウム137の摂取量となったことに注目する必要があります。  セシウム137を1日2ベクレル食べれば、チェルノブイリ原発事故後の最大値の10倍、ストロンチウム90を1日0.4ベクレル食べれば、チェルノブイリ原発事故後の最大値の4倍食べることになります。  チェルノブイリ原発事故は1986年4月26日に起きました。チェルノブイリ原発事故後7年後の1992年に日本の女性の甲状腺患者のピークが見られます。  しかし、15-19歳の女性、20-24歳の女性の甲状腺がんの患者数はチェルノブイリ原発事故後3年後の1989年から急増しています。福島県での甲状腺がんの子どもたちの多発年齢と一致しているように思えます。  日本政府、福島県は早急に、誠実な対応をするべきだと思います。  チェルノブイリ原発事故で被災したベラルーシの各州で、原発事故の起きた1986年から1992年までの7年間の小児甲状腺がんの発症数のグラフが以下です。汚染のひどかったゴメリ州では事故から3年後に小児甲状腺がんが早くも増加しています。    こんなものを食べてはいけないにもかかわらず、朝日新聞、福島コープは福島県の住民はセシウムを「1日たった4ベクレルしか食べていない」と報道しました。 『福島の食事、1日4ベクレル 被曝、国基準の40分の1』2012年1月19日 朝日新聞朝刊  これは犯罪であると思います。

東京第一原発から放出された球体セシウム微粒子 気象研究所 足立光司氏ら 2011年3月14日~15日

 気象研究所 環境・応用気象研究部の足立光司氏、梶野瑞王氏、財前祐二氏、五十嵐康人氏が、2013年8月30日のScientific Reports誌に、東京第一原発から放出された放射性物質が球体の粒子状となって、筑波の気象研究所にも飛んで来ていたことを発表しました。  その微粒子の主な成分は放射性セシウムであり、イメージング・プレート(IP)という手法で、放射性物質がわかるように可視化すると、特に2011年3月14日~3月15日、3月20日~3月21日に大量の放射性物質の微粒子が大気中を舞っていたことがわかりました。 Emission of spherical cesium bearing particles from an early stage of the Fukushima nuclear accident Kouji Adachi, Mizuo Kajino, Yuji Zaizen & YasuhitoIgarashi 20130612      この球状セシウムの微粒子は、Cs(セシウム)とともに相当量のFe(鉄)とZn(亜鉛)および少量のCl(塩素)、Mn(マンガン)、O(酸素)を含んでいました。直径は2.6マイクロメートル。この球状微粒子の密度を2.0g/cm3と仮定すると、微粒子の質量の5.5%がセシウムです。  またこの球状の微粒子たった1個にセシウム134が3.31 ± 0.06 ベクレル、セシウム137が3.27 ± 0.04ベクレル含まれていました。  この微粒子が鼻腔につけば、鼻血が、咽頭奥につけば長引く空咳が続く可能性があります。  大阪で放射能汚染がれきが燃やされて、焼却場周辺の住民に、鼻血、空咳、目の痛み、かゆみ、胸の息苦しさ、皮膚のかゆみ、ぴりぴりした感じがでています。放射能汚染がれきを燃やしたため、2011年3月15日と同様な金属微粒子が焼却場から飛び散った可能性があります。   以下は、たまあじさいの会の中西四七生さんが作成された資料です。たまあじさいの会とは、東京都の多摩地区400万人のゴミを最終処分するために東京都西多摩郡日の出町(人口約15,000人)に作られた、2つの巨大ゴミ最終処分場が、いかに周辺の環境を汚染し、住民の健康被害を引き起こしているか調査、報告している団体です。 『市民による日の出処分場の大気汚染に関わる周辺環境調査 たまあじさいの会』 『市民による日の出処分場の大気汚染に関わる周辺環境調査 たまあじさいの会 第二次の活動の取り組み(2003年3月~)』  ゴミ焼却場から出される微粒子のほとんぼは、PM2.5(2.5マイクロメートル以下の物質という意味)よりも小さく、その割合は質量比で全体の35%。つまり、焼却場から出る煤塵(ばいじん)のほとんどがPM2.5なのです。放射能がれきを大阪で燃やせば、また、放射性セシウムを中心とする、セシウム球ができます。その直径は2.6マイクロメートルほどである可能性が大きいです。この直径2.5マイクロメートル以下の微粒子はバグフィルターでも十分に捕捉することができず、境中に放出されていきます。環境省のいう、99.9%の煤塵(ばいじん)をバグフィルターで捕捉できる、の議論はでたらめです。焼却場ではバグフィルターが詰まり始めたときに、付着した煤塵(ばいじん)を払い落す時に、2.5マイクロメートル以下の微粒子の捕捉ができなくなるからです。  大阪府、大阪市は『美味しんぼ』に抗議するよりも先に、ハイボリューム・バキューム・エアサンプラーで、放射能汚染がれきを燃やしているときの大気を補足し、その大気中にセシウム球があるか、ないかを調べるべきだったのです。それを空間線量のマイクロシーベルト/時で「がれきを燃やしても空間線量は上がっていない」などと問題のすり替えをするべきではなかった、と思います。  参考:ハイボリューム・エアー・サンプラーに関する資料 内部被ばくを考える市民研究会『つくば市内における放射性物質及び放射線の測定 国立環境研究所』         

原発事故後、双葉町、丸森町の住民には鼻血が多かった 中地重晴氏(熊本学園大)ら

 「(2013年)8月28日、岡山大学大学院環境生命科学研究科のご協力により、住民の健康状態に関する調査の報告会を実施いたしました。これは、昨年の11月、双葉町、滋賀県長浜市旧木之本町及び宮城県丸森町の住民を対象に調査を行い、比較検討を行ったものであります。町民の健康状態については、他の自治体の住民と比べ様々な疾患の多発が認められ、さらに精神的な症状を訴える方が多くなっているという報告をいただきました」 ー双葉町 平成25年双葉町議会第3回定例会行政報告 伊澤町長 2013年9月18日 中地重晴氏(熊本学園大)、津田敏秀氏(岡山大学大学院環境生命科学研究科)、頼藤貴志氏(同)、鹿嶋小緒里氏(広島大学医学部)が行った、双葉町の住民の健康把握のための疫学調査 『水俣学の視点からみた福島原発事故と津波による環境汚染』中地重晴(熊本学園大学社会福祉学部教授 環境化学、環境マネジメント論、リスクコミュニケーション) より (11)双葉町民の健康調査の中間報告 岡山大学大学院環境生命科学研究科の津田敏秀氏,頼藤貴志氏,広島大学医学部の鹿嶋小緒里氏と共同で,双葉町の町民の健康状態を把握するための疫学調査を実施した。  調査の目的は,2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により,近隣住民の健康影響への不安が募っている。福島県においても福島県立医科大学を中心として,県民健康管理調査が行われているが,様々な問題点が指摘されている。今回,我々は,県民健康管理調査ではカバーされていないと思われる様々な症状や疾患の罹患を把握すること,比較対照地域の設定をしっかりと行うことを通して,どのような健康状態が被ばくや避難生活によるものかを評価・検証することを目的として調査を行った。  福島県双葉町,宮城県丸森町筆甫地区,滋賀県長浜市木之本町の3か所を調査対象地域とし,事故後1年半が経過した2012年11月に質問票調査を行った。所属する自治体を一つの曝露指標,質問票で集めた健康状態を結果指標として扱い,木之本町の住民を基準とし,双葉町や丸森町の住民の健康状態を,性・年齢・喫煙・放射性業務従事経験の有無・福島第一原子力発電所での作業経験の有無を調整したうえで,比較検討した。  多重ロジスティック解析を用いた分析結果は,主観的健康観(self-rated health)に関しては,2012年11月時点で,木之本町に比べて,双葉町で有意に悪く,逆に丸森町では有意に良かった。更に,調査当時の体の具合の悪い所に関しては,様々な症状で双葉町の症状の割合が高くなっていた。双葉町,丸森町両地区で,多変量解析において木之本町よりも有意に多かったのは,体がだるい,頭痛,めまい,目のかすみ,鼻血,吐き気,疲れやすいなどの症状であり,鼻血に関して両地区とも高いオッズ比を示した(丸森町でオッズ比3.5(95%信頼区間:1.2,10.5),双葉町でオッズ比3.8(95%信頼区間:1.8,8.1))。2011年3月11日以降発症した病気も双葉町では多く,オッズ比3以上では,肥満,うつ病やその他のこころの病気,パーキンソン病,その他の神経の病気,耳の病気,急性鼻咽頭炎,胃・十二指腸の病気,その他の消化器の病気,その他の皮膚の病気,閉経期又は閉経後障害,貧血などがある。両地区とも木之本町より多かったのは,その他の消化器系の病気であった。治療中の病気も,糖尿病,目の病気,高血圧症,歯の病気,肩こりなどの病気において双葉町で多かった。更に,神経精神的症状を訴える住民が,木之本町に比べ,丸森町・双葉町において多く見られた。  今回の健康調査による結論は,震災後1年半を経過した2012年11月時点でも様々な症状が双葉町住民では多く,双葉町・丸森町ともに特に多かったのは鼻血であった。特に双葉町では様々な疾患の多発が認められ,治療中の疾患も多く医療的サポートが必要であると思われた。主観的健康観は双葉町で悪く,精神神経学的症状も双葉町・丸森町で悪くなっており,精神的なサポートも必要であると思われた。これら症状や疾病の増加が,原子力発電所の事故による避難生活又は放射線被ばくによって起きたものだと思われる。  宮城県丸森町は,福島県境に接しており,福島原発事故による放射能汚染地域であり,住民には,放射能汚染脳汚染に関するストレスがかかっており,双葉町民と同様の健康障害が出てきていると考えられる。今後は,この調査と双葉町が実施した動向調査(3月12日から3月中の避難先の記録)から外部被ばくを相対化し,被ばく量との関係を評価する予定である。本年5月28日に,双葉町のほぼ全域が「帰還困難区域」に指定され,町民は,自宅に5年以上戻れないという宣告を受けた。避難生活が長引く中で,健康管理をどのように進めていくのか,継続して調査したり,町への支援を続けていく予定である。         双葉町は平成25年双葉町議会第3回定例会行政報告

福島取材で鼻血と若田光一船長の毎日1mSv被ばく

 福島に取材に入ったために鼻血がでるなら、毎日1mSv被ばくした、宇宙から帰還した若田光一船長は毎日鼻血を出すはずだ、という議論がありました。はい、若田光一氏が鼻血を出す事はありませんでした。  宇宙飛行士は鼻腔の粘膜に、放射性物質が入ってくることはありませんし、宇宙食が放射性物質で汚染されていない限りは、体内の放射性物質の濃度が上がる事はありません。  しかし、福島では福島市や郡山市でも大量の放射性物質が土中にあり、風とともに土ぼこりが舞いあがります。2013年10月1日福島駅前のイトーヨーカドーで購入した、福島県産梨を測定したところ、セシウム137が2ベクレル/kg検出されました。福島県に住み、福島県産の野菜、果物、肉を摂り続けていけば、鼻腔の粘膜に放射性物質がつき、血管の内側にアテローム硬化が起きる可能性があります。  それが鼻血の原因となっていると思います。  放射線医学総合研究所の市川龍資元副所長が、ビキニ事件の第五福竜丸の乗組員にも鼻血が出るという健康影響は出ていないと言っています(2014年5月13日 毎日新聞朝刊)。これはでたらめです。  ビキニ事件の被ばく者、第五福竜丸の乗組員、大石又七さんが書かれた、『ビキニ事件の真実』みすず書房2003年 のpp.41にこういう記述があります。 「しかし、被爆から6週間が過ぎた頃から、急にこれまで感じていなかった『だるさ』が襲ってきた。骨髄が放射能に犯され、白血球、赤血球、血小板が激減してきていたのだ。 耳や腕、骨髄穿刺で胸骨、腸骨、背骨からも骨髄細胞を何度も取り出しては検査する日々がつづいた。通常15万前後ある骨髄細胞数が1万から2万台、白血球数は健康な人で7000から8000あるものが1000を割って100台に下がるものも出てきた。 赤血球も400万以下に激減してきた。血小板は血液の凝固に欠くことができないもの、通常20万から90万が1万から2万に減り、そのため腹中出血が血便となって出てきた。発熱と同時に、鼻血、歯茎からの出血、皮下出血。腸や腎臓からの出血も認められるようになり、下痢もなかなか止まらない。放射線の影響をいちばん受けやすい生殖細胞は、当然のように数百に減った者や、無精子の者まで出てきた。」 -大石又七『ビキニ事件の真実』みすず書房2003年 pp.41  また、pp.38にはビキニ事件の被ばく者、第五福竜丸の増田三次郎さんの体調悪化について、以下の記述があります。 「現在のところ、生命の心配はないが、長い将来にかけてはガンの発生も懸念される。また、化学分析の結果では、ジルコニウム、ニオブ、テルル、ヨウ素、中でも強力なベータ線を出し半減期29年という持続性を持つストロンチウム90の存在がほぼ確かめられたので、これを有効に体外に取り出す方法がない現在、極めて心配だ。」同書 pp.38 「(1954年)3月27日、白血球数が2000台に下がっている者が3人、この3人の体表放射能は、上頭部が毎時2.4ミリレントゲン(=21マイクロシーベルト/時)であった。増田三次郎さんの頭髪には6~9ミリレントゲン(=52~78マイクロシーベルト/時)、自らの頭から約15000カウントの放射能を出していた。」同書 pp.38-39  ちなみに、原発事故当時、福島県で原発周辺から避難された方が、からだ表面の放射能汚染をスクリーニング検査で測定されています。その時に13000カウント(cpm)を超える数値が出たかたは2011年3月12日および3月13日だけで901人います。13000カウント(cpm)は甲状腺等価線量100ミリシーベルトに相当すると、原子力安全委員会も認めていたため、この13000カウントを除染基準としていたのですが、福島県は除染に使うお湯が作れない、寒さから除染に伴う健康被害の方が大きい、という理由で、除染基準を10万カウント(cpm)に引き上げてしまいます。2011年3月14日からです。それでもこの10万カウント(cpm)を超える被ばくをした方が102人いた、と報告されています。 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 中間報告 20111226  つまり、福島県住民でも、ビキニ事件の被ばく者と同じ程度の被ばくをした方がいる、ということではないでしょうか?ビキニ事件の被ばく者が、のちに「だるさ」を覚え、発熱と同時に、鼻血、歯茎からの出血、皮下出血。腸や腎臓からの出血もあったように、福島の住民の中にも同じ症状を訴える者がいても何ら不思議ではありません。  これを、福島県も、双葉町も、環境省も、認めないのです。まさに、内部被ばく無視の住民切り捨てだと思います。彼らは被ばく者が死ぬのを待っているかと、疑いたくなります。  だいたい、ミリシーベルトで住民の健康被害を想定すること自体、間違っています。外部被ばくと内部被ばくを足し算で考えることなど、人体の仕組みをまったく無視する暴論です。  宇宙飛行で188日間いた若田さんは188ミリシーベルト相当を外部被ばくしたことになります。しかし、宇宙飛行で188ミリシーベルト浴びるのと、年間1ミリシーベルト超えの福島県の地域で生活するのとを比べると、年間1ミリシーベルト超えの方がリスクが明らかに高いです。それがベラルーシ、ウクライナ、ロシアの現実です。  ビキニ事件で被災した方がた、チェルノブイリ原発事故で被災した方々、の健康被害にしか、本当の真実はありません。

「美味しんぼ」と「脱ひばく」を合言葉に 2014年5月16日 松井英介

「美味しんぼ」と「脱ひばく」を合言葉に 2014年5月16日 松井英介   はじめに   被災者の訴え=自覚症状を無視してはいけません    「美味しんぼ」が、新しい話し合いの渦を産みだしています。多くの人びとの関心が、双葉町をはじめとする被災現地の人びとの苦難に寄せられています。この機会に、あらためて3.11事故がもたらした、健康といのちの危機について、話し合い考え行動することができれば良いと思います。私は一臨床医ですから、私の日常は、患者さんの訴えを訊くことから始まります。訴えの多くは、ノドが痛い、目がかゆい、息が苦しい、むねやけがする、脈がとぶなど、何らかの自覚症状に関することです。その意味で、自覚症状は、患者さんが苦しめられている実態を示す、とても大切なものです。 今回「美味しんぼ」に登場し、話題になっている鼻血やひどい疲労感も、これら自覚症状のひとつです。テレビや新聞に登場する人の中には、そんなものはなかったとか、“風評被害”を煽るものだとかいう人もいるようですが、それらの人々は苦しんでいる被災現地の人びとを思いやる心がないのかと疑ってしまいます。現に苦しんでいる人がいるのに、それらの訴えは仮病だとでもいうのでしょうか。 3.11事故によってふるさとを奪われ、不自由な仮設住宅や借り上げ住宅暮しをしなければならなくなって、また、見知らぬ地に移り住まざるをえなくなって、すでに3年以上。全国各地に数万人、岐阜にも300人ほどの方が移り住んでいらっしゃいますが、多くの場合家族ばらばらの不自由な暮らしを強いられています。これら、今まで経験したことがない状況の下で苦しんでいる人びと、とくに子どもたちに想いを馳せることが、いま最も求められていることではないのか、私は思います。   異様な「美味しんぼ」攻撃  今回私は全く偶然に「美味しんぼ」の作者たちと出会ったのですが、それから1年以上おつきあいしてみて、ある感銘を覚えています。それは、雁屋哲さんと編集部の方たちが、じつに丹念な取材を重ね作品を仕上げられる、その姿勢に対してです。私への取材も昨年の秋から今年にかけて、随分長い時間がかかりました。私も忙しい毎日でしたが、私を惹きつけて離さない力が彼らにはありました。それが、30年もつづいてきた「美味しんぼ」人気の秘密かもしれません。 今回の「美味しんぼ」攻撃の特徴は、東電原発事故の原因をつくった日本政府が乗り出していることです。菅義偉官房長官、石原伸晃環境大臣、環境省、石破茂自民党幹事長らが舞台に上がりテレビメディアにも登場しています。橋下徹大阪市長や佐藤福島県知事らは“風評被害”などというわけのわからない言葉を使って、「美味しんぼ」の内容があたかもウソであるかのように印象づける発言をしています。 「美味しんぼ」に描かれていることは事実です。 被災者が実際に経験した自覚症状など具体的事実を元に表現された作品に対する、権力者のこのような対応は、国家権力主導の異様なメディアコントロールだと言えるのではないでしょうか。 東電と国による言論・表現の自由の圧殺    3.11事故は、多額の税金を使いながら巨利を貪ってきた東電関連原子力産業と国策として原発を推進してきた日本政府におもな責任があるので、彼らがまず被害を受けた福島県をはじめとする汚染地域の住民に謝罪し、賠償すべき事柄です。それが、あろうことか、あたかも住民の健康被害はなかったがごとく言い募り、住民の立場から福島の過酷な現実を活写した「美味しんぼ」を攻撃するという挙に出ているのです。彼らの行いは「美味しんぼ」の抹殺と作者の口封じであり、言論と表現の自由の圧殺に道を開くことものだと言えましょう。 3.11事故によって最も甚大な被害をうけ全町民と役場が避難を余儀なくされた双葉町は、「差別助長」「風評被害」を謳い文句にした抗議文を「美味しんぼ」の出版社小学館に出しました。住民のいのちと生活を守るために活動すべき第一線の自治体として、同町と町民の苦難の現実を、また井戸川克隆前町長と伊澤史朗現町長の今までの努力と実績を、全国民に知らせる良い機会にすることもできたであろうに、まことに残念の極みです。 双葉町は井戸川克隆前町長の時に、疫学調査を行っており、町民が訴えた症状は鼻血のみに留まらず、様々な自覚症状が記録されています。 この問題に関して放射線防護の研究者、野口邦和・安斎育郎両氏は、2014年4月29日付毎日新聞紙上で、「被ばくと関連ない」「心理的ストレスが影響したのでは」と述べています。お二人は、血小板が減少し全身の毛細血管から出血するような、1シーベルト以上の大量急性被曝を、鼻血や全身倦怠感など自覚症状発症の条件だとしています。このような考え方は、残念ながら彼らに特異的な事柄ではなく、広く一般の臨床現場の医師にもある誤った認識です。その論拠は、後述する「被曝の健康リスクを知り知らせる」の項をご参照ください。 「低線量」放射線内部被曝を理解して患者さんの自覚症状に耳を傾ける    「美味しんぼ」でもご紹介しましたが、私たちの身体の70%以上は水です。その水の分子をイオン化放射線は切断して、細胞の中に、水酸基や過酸化水素など毒性の強い物質を生成します。これらの毒が粘膜や毛細血管の細胞、さらに遺伝子やDNAを傷つけるのです。この現象をバイスタンダー効果といいますが、このような放射線がもたらした間接効果の方が、放射線そのものによる直接効果より、健康影響は大きいことがわかってきています。 遺伝子不安定性の誘導だとかエピ・ジェネティックスといわれる現象も、最近の分子生物学の成果です。 「低線量」放射線内部被曝の健康影響を、私たちは十分理解した上で、住民の方々の訴えについて考える必要があるのではないでしょうか。後で述べるように、アスベストとか有害な化学物質との複合作用も重要です。 様々な自覚症状を訴える被災者の方々が相談にこられたとき、このような“専門家”や医師の心ない対応が、新たなストレスになることを、私たちは肝に命じなければならないと、日々、自分に言い聞かせております。 心理的ストレスといわれるものも、元をたどれば、その原因は3.11東電原発大惨事にあるのですから、患者さんの自覚症状や訴えを頭ごなしに否定するのではなく、まず虚心に耳を傾けることから始めるべきではないでしょうか。 3.11事故によって生活環境に放出された放射性物質の処理    3.11事故によって自然生活環境に放出された放射性物質は、東電が自らの産業活動の過程で排出したいわば産業廃棄物だと私は考えます。ですから東電が自らの責任において、処理するのが原則です。放射性物質はできるだけ拡散させず、1ヶ所に集めて、言うならば事故を起こした原発の敷地内に集めて管理・処理するべきです。  大量の人工放射線微粒子とガスは、今も出つづけていますが、これら様々な核種は県境を超えて拡がり、地形や気象状況によって、福島県だけでなく東北・関東地方などにもホット・スポットを形成しました。日本政府は、これら人工核種によって汚染された岩手県と宮城県のガレキと呼称される汚染物を、汚染が少ないからよいとして日本各地の自治体に受け入れさせて、処理してきました。大阪府もそれら自治体のひとつでした。前述したように、放射性物質を広く拡散させることは厳に慎むべきことで、一点に集中して管理・処理するのが原則です。このような日本政府の放射性核種拡散政策は根本的な誤っています。しかし政府はそれを強行し、大阪府はその処理を受け入れてしまいました。このことによって、福島県など高度汚染地域から避難してきた母と子が、二度目三度目の避難・移住を強いられる事例がでてきているのです。 「大阪おかんの会」の健康調査と大阪府放射性物質濃度調査の問題点    大阪府のガレキ処理による健康影響について熱心に調査を続けてきたお母さんたちがいます。  「大阪おかんの会」http://ameblo.jp/osakaokan2012/ 大阪府が本格焼却を始めた2013年2月以降4月19日までの集計結果は次のようです。報告人数797名/自覚症状総数1826=2.29(一人あたりの平均発症数)① 喉の異常・咳・痰…585② 鼻の異常…鼻水・痛み188+鼻血97=226③ 眼の痛み・かゆみ…272④ 頭痛…135⑤ 皮膚の異常…80[皮膚の症状:痒み、ピリピリする、発疹、吹き出物(全身)]⑥ 肺、気管支の異常・息苦しい…86⑦ 心臓・動悸・胸痛…71⑧ 倦怠感…55⑨ 発熱…53⑩ 腹痛・下痢…38⑪ 吐き気…31⑫ 骨・筋肉、関節…23⑬ 耳、めまい、ふらつき…36 [耳の症状:痛み、耳鳴り、聞こえが悪い(喉、鼻にも異常有り)など]⑭ 眠気、ヘルペス、痙攣、その他…61  その他注目すべきこととして、つぎのようなことが挙げられます。1.避難してきていた人たちが、避難する前に感じたことや症状が同じと感じた。2.臭いがひどい、喉が痛くなるなどでしていたマスクに赤い色が付いた。3.最初は中国からのPM2.5かと思った。しかし強い臭いがし、黄色いような色が着いたものが流れてきて中国からのものでないと思った。  橋下徹大阪市長は、これら「大阪おかんの会」の調査結果を無視し、大阪府市の住民の健康といのちを軽視した妄言を繰り返しています。住民のいのちを守る市長としては、失格だと言わざるを得ません。 大阪府は、ガレキ処理に際して調査した放射性物質濃度の測定結果を発表しています。それによれば2012年10月31日に採取された災害廃棄物の放射性セシウムの濃度がキログラムあたり8ベクレル。また、2012年11月30日に採取された飛灰の放射性セシウムの濃度は、それぞれキログラムあたり37~38ベクレル。 飛灰の基準値は大阪ではキログラムあたり2000ベクレル(日本国の基準値は3.11事故後2011年6月3日8000ベクレルとした)ですが、基準値そのものに、胎児や子どもの基準値を示さないなど重大な問題点があります。 ドイツ放射線防護協会は、乳児、子ども、青少年に対する一キログラムあたり4ベクレル以上の基準核種セシウム137を含む飲食物を与えないよう推奨」しており、それに比べると、38ベクレルは10倍近い値。身体に影響が無いとは、断定できません。 松井英介著「見えない恐怖―放射線内部被曝―」(2011年)旬報社刊  ガレキを汚染した人口放射性核種に関しては、放射性セシウムが測定されているだけです。後述するように、ストロンチウム90など、全ての人工核種の検査が、放射線による健康影響調査には不可欠です。 加えて私たちが見落としてはならない大切なことは、それら人工放射性核種とアスベストや有害な化学物質との複合汚染による健康影響があるということです。 「低線量」内部被曝の健康リスクを知り知らせる    3.11事故現場から生活環境に放出された人工放射核種について日本政府が発表したデータで、宮城県南隣、福島県相馬市でセシウム137(137Cs)の1/10のストロンチウム90(90Sr)を検出されています。しかし、土や食品に含まれる放射性セシウム以外の核種についての検査はほとんどなされておらず、ストロンチウム90(90Sr)をふくむ全ての人工放射性核種の検査が健康影響評価には不可欠です。呼吸や飲食で体内に入ったストロンチウム90(90Sr)は、カルシウムとよく似た動きをするため、骨や歯や骨髄に沈着し、セシウム137(137Cs)の何百倍も長い時間、すなわち数年~数十年間排出されず、骨髄中の血球幹細胞を障害しつづけます。その結果胎児の発達が障害され、白血病など血液疾患発症の原因となります。 私たちの細胞60兆個の元はたった一個の細胞=受精卵。約10ヶ月で脳眼鼻耳手足心肝などの細胞に分化します。胎児は放射線感受性が高いことを学校で教えるべきです。人工放射性物質はゼロ!放射性汚染物の処理は東電事故現場一点集中が原則です。私たちは、記録を将来にわたって継続するため、最近「健康ノート」を発刊しました。  低線量放射線被曝の健康影響は、まだ不明な点が多いなどと言う研究者もいますが、そんなことはありません。低線量放射線のとくに内部被曝による健康障害に関する多くの調査研究結果がすでに集積されています。低線量被曝による身体への影響は、2009年に発表されたニューヨーク科学アカデミーの論文集にも、チェルノブイリ事故後の多くの実例が紹介されています。また、通常運転中の原発から5km圏内に住む5歳以下の子どもたちに2倍以上白血病が多発しているという、ドイツで行われた疫学調査結果も重要です。 今後日本で放射線による健康影響を調査して記録していく上で不可欠の条件は、まず、生活環境に出た全ての人工放射性核種を調べ、それら核種の放射線量をベクレルで表示することです。そして、それらデータと自覚症状を含む病状、そしてさまざまな検査結果との関係を記録し解析することが必要です。 また、年間100ミリシーベルト閾値に関しては、「全固形がんについて閾値は認められない」とした放射線影響研究所の2012年疫学調査結果報告「原爆被爆者の死亡率に関する研究第14報 1950-2003年:がんおよびがん以外の疾患の概要」に注目すべきです。  おわりに   「脱ひばく」を合言葉に、チェルノブイリ法、国連人権理事会特別報告者報告と勧告、IPPNW声明を、子どもたち=次世代に伝えましょう    1991年成立したチェルノブイリ法の基本目標はつぎのようなものです。すなわち,最も影響をうけやすい人びと、つまり1986年に生まれた子どもたちに対するチェルノブイリ事故による被曝量を、どのような環境のもとでも年間1ミリシーベルト以下に、言い換えれば一生の被曝量を70ミリシーベルト以下に抑える、というものです。 2013年5月に公表された国連人権理事会特別報告者報告と勧告、そしてそのすぐ後に出された核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の声明は、日本政府の提唱する年間20ミリシーベルトは容認できないとし、被曝線量を最小化するためには、年間1ミリシーベルト以上の地域からの移住以外に代替案はないとしました。 3.11以降想像を絶する苦難を押し付けられた双葉町をはじめとする被災現地の人びとの現状を知り、人びとが家族や地域の人間関係をこわすことなく、汚染の少ない地域にまとまって移り住み、働き、学ぶ条件を整えることが、求められています。 「脱ひばく」すなわち「子どもたち=次世代にこれ以上の被曝をさせない!」を合言葉に、「美味しんぼ」に関心を寄せる良心の若者を総結集し、活動の輪を大きく拡げましょう。 <健康ノートについて > 川根 眞也  2部作で、1部は資料編、もう1部はカルテ編です。資料編には、東京第一原発事故からの経過のメモ、2011年3月11日からの福島県および関東・東北地方の天気、放射能プルームが襲った地域、福島県の心臓疾患および脳血管疾患による死亡率の増加と放射性降下物との関係、など掲載しています。  税込価格 840円です。 健康ノートご注文先は 垂井日之出印刷  TEL:0584-22-2140  FAX:0584-23-3832  ■取扱い書店■ 取扱い書店を募集しております。 (問い合わせ)kawaneアットマークradiationexposuresociety.com 内部被ばくを考える市民研究会 <愛知県名古屋市> ほっとブックス新栄 〒461-0004名古屋市東区葵1丁目22-26 TEL:052-936-7551  

『美味しんぼ』の「福島県取材に入ったら鼻血が出た」が福島差別につながるか?

 『美味しんぼ』の「福島県取材に入ったら鼻血が出た」が福島差別につながるか、という論争になっています。  2014年5月7日、双葉町もこの『美味しんぼ』第604話発行によって、「県外の方から、福島県産の農産物は買えない、福島県には住めない、福島方面への旅行は中止したいなどの電話が寄せられており、復興を進める福島県全体にとって許しがたい風評被害を生じさせている」「双葉町民のみならず福島県民への差別を助長させることになる」と抗議声明を出しています。  その一方で、この双葉町の抗議声明も「原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません。」として、「原因不明の鼻血がでた町民」が「大勢」いることを否定しつつ、暗に「ある程度」の数の「原因不明の鼻血がでた町民」がいることを示唆しています。 双葉町『小学館発行『スピリッツ』の『美味しんぼ』(第604話)に関する抗議について』  そもそも、埼玉県加須市に全村避難した住民約1200人のうち、167人が1年10ヶ月の間に亡くなっています。 ブログ 大川原有重 春夏秋冬さん『福島県双葉町から埼玉に避難した被災者 1年10ヵ月で167名が亡くなる』  実に14%に町民が亡くなったことになります。井戸川克隆元町長は、福島県双葉町に戻ることは不可能であると考え、新たな町を他県に作るべきであると考えていました。政府、福島県の住民の健康無視、強制的な帰還、被ばくした住民が死ぬのを待つやり方に抗議をし続けてきました。政府や福島県は年間1ミリシーベルトを守らず、年間20ミリシーベルトまでを帰還させる方針です。井戸川克隆氏はこれに対し、「年間1ミリシーベルトを守られない、私たちは日本国民ですか。」と政府に問いました。そして、町長が独断、横暴であり、帰還を目標とする「復興事業」が進まないとして、双葉町町議会議員からリコールされたのでした。  福島県野菜を食べないのは、内部被ばくを避けるために、必要なことです。本日、5月10日、13時30分より、さいたま市産業文化センター(与野駅または与野本町駅から徒歩15分)で、ウクライナに5回の調査に入った、小若順一さん(食品と暮らしの安全基金)の講演会があります。そこでは、チェルノブイリ事故から28年たったウクライナの各町で、大人も子どもも頭痛や鼻血、足痛を訴えています。その地域の畑土壌から放射性物質の作物への移行を少なくするよう、カリウムの化学肥料を提供したら、頭痛、鼻血、足痛が改善した、中には、まったく痛くなくなった大人、子どもがでてきたという報告が行われます。 『チェルノブイリの健康被害「子どもの痛みをなくす調査プロジェクト」第5回報告会「希望」』 日時:2014年5月10日(土)13:30~(開場:13:10) ◇参加費:500円 ◇場所:さいたま市産業文化センター ホール ◆チェルノブイリ原発から南東に400kmほど離れたロゾヴァ市リツェイ学校 11年生(17~18歳)   手が痛い人  0人  足が痛い人  0人  風邪をひきやすい人、熱が出やすい人 0人  頭がくらくらする人、めまいがする人 0人  首が痛い人、のどが痛い人      0人         ↓ この地域の野菜 セシウム137 すべてND(不検出)。検出限界0.01ベクレル/kg ◆チェルノブイリ原発から西に125kmほど離れたモジャリ村  足が痛い生徒 6~7割  「子どもたちは元気ですか?」モジャリ村学校副校長「みんな病気よ」  「足が痛い子は?」     モジャリ村学校副校長「たくさんいるわよ」         ↓ この地域の土壌 セシウム137  127ベクレル/kg これは現時点のさいたま市の汚染に近い。          ストロンチウム90 65ベクレル/kg   この地域の野菜中のセシウム137  コケモモ 25ベクレル/kg  ライ麦  10ベクレル/kg  牛乳    5ベクレル/kg  ポテト   2ベクレル/kg  チーズ   2ベクレル/kg  リンゴ、リンゴジャム、クルミ、小麦・カラス麦、ニンジン 1.3ベクレル/kg未満 セシウム137の最大値  キノコ  26670ベクレル/kg  ベリー   6600ベクレル/kg  蜂蜜    3350ベクレル/kg  ということは28年後のさいたま市の蜂蜜も半分くらいの汚染度になるのか?(セシウム137の半減期が30年なので) ◆無痛地帯に一番近いが、痛みが出ていた村 チェルノブイリ原発から南東に150km離れた村 ノヴィ・マルチノヴィッチ村学校 25名 10、11年生(15~17歳)と父母   足が痛い人            1人(11歳から)  (この子は「頭が痛い」「自律神経失調症」「鼻血が出る」でも手を挙げた。キノコはよく食べる。)  頭が痛い人           18人 (72%)  自律神経失調症の人        5人 (20%)  鼻血がでる人          13人 (52%)  風邪をひきやすい人       12人 (48%)   風邪でよく学校を休む人      8人 (32%)        ↓  ノヴィ・マルチノヴィッチ村議会議長に用意してもらった子ども1日分の食事   子ども1日分の食事中のセシウム137   サンプル名   重量(g)  1食あたりのベクレル数   肉のスープ    450      0.495   赤いボルシチ   400      0.28   蒸しじゃがいも  550      0.66   酢漬けトマト   350      0.525   ブラック・カラント・ジャム            400      0.4―――――――――――――――――――――――――――――    合計     2150     1日2.36ベクレル            1kgあたりに換算すると、セシウム137が1.1ベクレル/kg。この食事を摂り続けていくと、上記の健康被害になる可能性があるということを示唆してます。        ↓  この地域の土壌 セシウム137     7ベクレル/kg           ストロンチム90   3ベクレル/kg   ※このセシウム137は非常に低い。しかし、住民は畑に木炭の灰を撒いていた。土壌のセシウム8ベクレル/kgの場所で、木炭の灰は263ベクレル/kgであった。  まず、放射性物質入りの食べ物、セシウム137で1ベクレル/kgでも食べ続けていくと、頭痛、鼻血、足痛の症状が出るということを、小若順一氏らは調査してきました。政府、文部科学省と現在交渉を開始しています。  学校給食の食材をセシウム137を1ベクレル/kg以下にしろ、と。  福島県の試験操業が始まり、築地にも魚が入ってきています。朝日新聞デジタル『福島)3年越し いわきの試験操業の魚、築地に初出荷』2014年5月9日  福島県いわき市沖で獲れたヤナギムシガレイは放射性セシウム合計 13ベクレル/kgと報じられています。 子どもも大人も食べるべきではない、と考えます。  ちなみに、『美味しんぼ』原作者の雁屋哲氏は、2011年11月からの1年間で3回現地を訪れています。オーストラリアの情報を紹介している日本語ミニコミ紙「日豪プレス」記者から現地の放射能被害について聞かれ、雁屋さんは、目に見えないのが怖いとして、自らの体験をこう語っています。「取材から帰って夕食を食べている時に、突然鼻血が出て止まらなくなったんです。なんだこれは、と。今までの人生で鼻血なんて出すことはほとんどなかったので驚きました。その後も夜になると鼻血が出るということが何日か続きました」 病院に行っても、放射能とは結び付けられないと言われたといいます。雁屋さんは、さらに疑問を投げかけています。「取材後にすごく疲労感を感じるようになった」、同行スタッフや当時の福島県双葉町の町長も、鼻血や倦怠感に悩まされていたと話しました。現地の子供たちもだるさを訴えていたとし、「あの周辺は人は住んではいけない所になってしまった」と漏らしています。 雁屋さんは、福島の食べ物を食べて応援することも疑問だと言っています。特に、漁業は、何十年経っても復活は無理なのではと指摘し、東北地方の海産物の多くについて、「恐らく食べられなくなるでしょうね」と言っています。 「福島取材で鼻血が止まらなくなった」 「美味しんぼ」雁屋哲インタビュー記事が物議2014/1/15 19:48 J-CASTニュース より転載・引用

原子放射線の影響に関する国連科学委員会 (UNSCEAR)の国連総会への 2013年10月フクシマ報告書についての 注釈付き論評

原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の国連総会への2013年10月フクシマ報告書についての注釈付き論評   pdf版 社会的責任を果たすための医師団(PSR)、米国世界的存続のための医師団、カナダMedAct−より安全、公平、そして良い世界のための医療専門家団、英国オランダ医学戦争学協会、オランダ核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、ドイツ社会的責任を果たすための医師団/核戦争防止国際会議、スイス核戦争防止医師協会、フランス核戦争防止医師協会、イタリア平和と発達のためのインド医師団、インド社会的責任を果たすための医師団、マレーシア社会的責任を果たすための医師団、エジプト人類の福祉のためのナイジェリア医師会、ナイジェリアIndependent WHO−原子力と健康への影響2013年10月18日 「骨に癌ができ、血液は白血病を患い、肺に毒が入ってしまった子供たちや孫たちの数は、自然由来の健康被害と比べると統計的に小さいと思えるかもしれない。しかし、これは自然由来の健康被害ではない。さらに、統計的な問題でもない。人間の命が1人分でさえも失われるということ、あるいは、赤ちゃんが1人でも奇形を持って生まれてくるということは、例えその赤ちゃんが、我々が皆死んでしまったずっと後に生まれて来るかもしれなくても、我々全員にとって重要なことであるべきだ。我々の子供たちや孫たちは、我々が無関心を装ってもよいような、単なる統計ではない。」  ジョン・F・ケネディー、1963年7月26日 「リスクモデルによる推定は癌リスクの増加を示唆するが、放射線誘発性の癌は、現時点では、他の癌と区別がつかない。ゆえに、この集団における、事故による放射線被ばくのせいである癌発症率の識別し得る増加は予期されない。」 UNSCEARの国連総会への2013年フクシマ報告書、2013年10月25日 概要 (I) はじめに (II) 考慮すべき10の問題 (1) 日本でより大きな大惨事を防いだ主要因は風向きだった(2) 原子力災害は進行中であり、放射性物質を放出し続けている(3) 放射性物質の放出と放射線への被ばくの推定は、中立的な情報源に基づくべきである(4) 福島産の農作物の推奨は、放射線被ばくのリスクを増加させる(5) ホールボディーカウンターは、内部被ばく量を過小評価する(6) 東電の作業員の線量評価は信頼できない(7) 胎芽の放射線への特別な脆弱性が考慮されていない(8) 甲状腺癌や他の癌は何十年もモニタリングする必要がある(9) 非癌疾患や放射線の遺伝的影響も、またモニタリンングされるべきである(10) 放射能フォールアウトと自然放射線との比較は誤解を招く(III) 結論 (I) はじめに  核戦争防止国際医師会議(IPPNW)は、より健康的で、より安全で、より平和な世界を目指して活動する医師達の世界的な連盟である。IPPNWの支部は、60 ヶ国以上で、核廃絶を支持し、核のない世界を提唱する団体として活動している。IPPNWの活動は、1985年にノーベル平和賞を授賞した。この論評は、IPPNWの米国支部、ドイツ支部、フランス支部、オランダ支部、マレーシア支部、エジプト支部、カナダ支部、インド支部、英国支部、ナイジェア支部、イタリア支部、およびスイス支部によって提出された。  2011年に、IPPNW役員会は、核兵器がない世界というゴールに向けて、核の連鎖の中の軍事部門と民生部門の間の強い相互依存性を指摘することで、より包括的なスタンスをとることに全会一致で同意した。核兵器が存在しない世界は、我々が原子力から手を引かなければ可能ではない。医師として、我々はまた、ウラン採掘や放射性廃棄物処理場の公衆衛生への影響、世界中で高濃度放射性の核分裂性物質を処理および輸送することに伴う危険、原子力の民生利用に伴うコントロール不能のリスク、核分裂性物質の民生および軍事での重複利用の可能性とその結果である核兵器拡散のリスクから、核兵器実験の世界的な健康影響と解決されていない核廃棄物の問題などの核の連鎖のすべての側面による環境および健康影響を深く懸念している。地球上に存在するすべての人間は、軍および工業による放射能汚染が存在しない、健康と幸せと一致した環境に住む権利を持つ。  2011年3月のフクシマの炉心溶融の後で、IPPNWの医師達は、福島県の被災した多くの家族、地元の政治家や医師達から連絡を受け、放射能フォールアウトによる健康影響についての専門的知識を求められた。これまでの2年半で、IPPNWの医師達は、汚染地域の住民が有効な科学的情報を収集し、子供達を放射線の有害な影響から守ることを支援してきた。  多くの場合、IPPNWは、原子力産業とロビー団体による、大惨事の影響を隠そうとする試みに批判的に立ち向かい、公的に非難しなければいけなかった。子供の年間放射線被ばく許容量を1mSvから20mSvに上げるという政府の法令に反対した家族、医師や科学者らを支え、放射線被ばくの増加は有害ではなく、健康被害は予測されないと公的に宣言した日本の原子力ムラの支持者に対して、強い姿勢を取った。  2012年5月と2013年2月に、我々は、WHO/IAEAのフクシマに関する報告書についての批判的評価を公表した。そして、福島および日本各地の市民社会、医師、活動家や影響を受けた家族らと連絡を取り続けている。2012年8月に広島で開催されたIPPNWの第20回世界大会では、IPPNWの医師達は、これらの繋がりを深めるために、福島県の汚染区域を訪問し、また、科学会議、市民集会や大学の講義に参加した。  国連人権理事会の「健康に対する権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏のように、我々は、フクシマの放射能フォールアウトに影響を受けた人達が、健康と幸せを保てるような生活水準への権利を系統的に奪われていると懸念している。  10月25日に、UNSCEARは、国連総会に年次報告を提出する。フクシマ原子力災害に関しては、この報告書は、「被ばくした人達において、放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない。」と述べている(注1)。これは、2013年5月31日のUNSCEARプレスリリース(注2)で述べられた、「福島第一原子力発電所事故後の放射線被ばくは、即時に健康に影響を及ぼさなかった。一般市民と作業員のほとんどにおいて、将来、いかなる健康影響でも起こるとは考えにくい。」の繰り返しである。  健康と健康な環境への人権を懸念する医師や科学者として、我々は、謹んで反対の意を表明する。フクシマについての科学文献や現在の研究からは、そのような楽観的な仮定は正当化されない。広範囲に渡る複雑なデータの評価に尽力されたUNSCEAR委員会のメンバーに感謝の念を表し、原子力災害の公衆衛生と環境への影響の評価において役立つ情報が含まれていると信じてはいるが、この報告書は、また、大惨事の真の影響を隠蔽することを助長している。  UNSCEARの仮定の多くは、2012年5月と2013年2月に公表されたWHO/IAEA報告書(注3,4)に基づいているが、これらの報告書は、真の放射線被ばく量を正しく伝えておらず、不完全な仮定に従っており、過去2年半以上に渡って継続している放射能放出を無視し、放射線の非癌影響を除外していた(注5,6)。  現在のUNSCEAR2013年10月報告書に関して、10の重要な問題に注意を促したい。これは事前にUNSCEARに送られ、総合的なフクシマ報告書の起草において考慮するように委員達に依頼してある。下記で、この10の重要な問題について詳述し、なぜ我々がUNSCEAR報告書はフクシマ原子力災害による健康影響の系統的な過小評価であると考えるのかについて、我々のコメントが一般市民と政治家の理解を促すことを望む。 (II) 考慮すべき重要な10の問題 (1) 日本でより大きな大惨事を防いだ主要因は風向きだった  炉心溶融による放射能フォールアウトの約80%が太平洋に運ばれ(注7)、大都市部に届かなかったために、日本国民が最悪のシナリオを回避できたということを認識することが重要である。この理由は、入念に練られた救助計画や技術的知識のおかげではなく、むしろ、風向きが南ではなく北東に向かったために、3,500万人以上が住む首都圏が激しく汚染される危険をもたらさなかったという、単なる幸運のせいである。しかし、ある1日に、風が沿岸方面に向かって吹いたために、破壊された発電所から何十kmもの内陸部に多くの放射性物質が到達してしまい、小さな町や村から何万人もの住民が避難せざるを得なくなった。フクシマ事故は、日本のような高度の工業先進国でさえも、原子力につきものの危険をコントロールすることができなかったのを明白に示した。  日本のほとんどは幸運にも大きな放射能フォールアウトを免れたが、福島県だけが影響を受けたわけでもない。日本全国の住民は、大気中または水や食物中の放射性物質に晒されただけでなく、これからも、主に汚染食品を通して被ばくをし続けるであろう。それ故に、個人および集団被ばく線量の推計が、千葉県、群馬県、茨城県、岩手県、宮城県と栃木県の近隣6県のみならず、2011年3月15日と21日両日にかなりのフォールアウトがあった都道府県でも行なわれることが重要である。これには、千葉県と同じく南関東に位置する東京都、神奈川県と埼玉県、そして東海地方の静岡県が含まれる(注8)。東京から140km南の静岡県の茶葉でさえ、放射能フォールアウトによって汚染されていたのが見つかっている(注9)。  「被ばくした人達において、放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない。」というような発言が、原子力事業者や原子力規制当局が将来の事故やメルトダウンを心配しなくても良いというシグナルとして理解されるのではないかと我々は懸念している。また、我々は、UNSCEAR報告書の結論が、放射線安全基準や緊急対応ガイドラインに影響を与え、将来の世代により大きな被ばくリスクがもたらされるのではないかとも懸念している。  我々は、日本中の住民が、放射能レベルの増大によって直接影響を受けるであろうということを強調することが重要だと感じる。最大の実効線量がみられたのは、作業員と福島県の汚染区域の住民だったとは言え、最終的には、福島県外の大集団における慢性の低線量被ばくが、癌と非癌疾患の過剰発生のほとんどを引き起こすことになるのである。これは、将来の原子力安全ガイドラインや推奨を考慮するにあたって重要な問題である。  また、日本がもう少しでもっと重大な災害にみまわれる所だったということ、2011年3月中旬に風向きが南もしくは西向きであったなら、より優れた緊急計画や、より効率的な避難や除染でさえも、二次的な役割しか果たせなかっただろうということを忘れてはいけない。 (2) 原子力災害は進行中であり、放射性物質を放出し続けている  フクシマ原子力災害は、しばしば、2011年3月の当初の炉心溶融後から継続している放射能放出を無視し、単独の出来事であると誤って描写されている。特に、福島第一原発で進行中の作業や福島県内の除染作業による放射性粒子の継続した拡散、放射能汚染水貯蔵タンクや損傷した炉心からの土壌や地下水への漏えい、そしてまた、野原や森林や都市部の居住地から洗い流される放射性同位体による土壌と地下水の放射能汚染を考慮することが大切である。除染の試みは、雨期には森林や野原などの自然の蓄積場所から、またや風の強い日や春には花粉の飛散が放射性粒子の拡散に寄与したりして、放射能が以前に除染された地域に再分布されるために、市町村によっては一時的な対策にしかならないということが証明されて来た(注10, 11)。  フクシマ原子力災害は、特にセシウム137やストロンチウム90などの半減期が長い放射性核種を考慮すると、汚染の蓄積量の再評価が絶えず必要となる、進行中の大惨事であると認識されなければいけない。将来、地下水や海に放射性核種の放出が起こらないとは言いきれない。現に、UNSCEARの国連総会への報告で「海洋への低量水準の放出は、2013年5月の時点で持続していた。」と述べられている(注12)。 将来的に、このような地下水と海への漏えいは、地下水源と食物連鎖からの放射性核種を通して、一般住民の内部被ばくの増加に繋がるであろう。このシナリオは、バーバリア地方さえも含む欧州東部と中部のいたる所で、きのこや野生鳥獣に含まれている放射性セシウム137が、チェルノブイリ炉心溶融から25年も経った今でさえも公衆衛生に懸念をもたらしていることを考えると、現実的な評価である(注13, 14)。  フクシマの個別の事例としては、放射性廃棄物の地下水と海への継続した漏えいと流出が、固有の問題となる。日本政府の公式報告(注15)によると、東電は、2011年4月4日から10日の間に、10,393トンの放射能汚染水を意図的に海に放出した。海洋汚染全体の当初の推定は、東電によると4.7 Pbq (ペタベクレル= 1015ベクレル)だった。しかし、過去最大の太平洋汚染は、最初の炉心溶融直後の何週間かの放射能フォールアウトから起こっており、これは、東電の推定には含まれていない。京都大学の科学者達が太平洋の放射能フォールアウトの度合いを測定しようとし、最終的に、ヨウ素131とセシウム137両方からの海洋汚染の合計が15 PBqだと計算した(注16)。しかし、この推計値でさえも低過ぎることが分かった。海洋汚染を測定するにあたり、UNSCEARは、2011年8月の川村氏らによる研究論文を主に用いたが、この研究論文(注17)では、海洋汚染の合計が、ヨウ素131が68 PBqでセシウム137が9 PBqであると決定された。  これらの推計値は、フクシマの炉心溶融後にあり得た海洋汚染の範囲の概要としては十分ではあるとは言え、いくつかの誤差要因を考慮する必要がある。川村氏は、「モニタリングデータがなかったので、3月21日の前に海への直接の放出はなかったと仮定した。」と述べている(注18)。また、この研究での計算は、「4月6日以降に大気に放出された量の情報はない。故に、4月6日以降には放射性物質が大気へ放出されなかったと仮定した。」と、現実主義的な立場から、4月6日以降の大気への放出を考慮していない(注19)。最も不可解なのは、東電が先日明らかにしたように、事故の当初から毎日約300トンの放射能流出が海に到達しており、過去31ヶ月での合計が290,000トンになるにも関わらず、2011年4月30日以降の放射能流出がすべて無視されていることである。川村氏らでさえも、「おそらく、将来のある時点で、海洋および大気への放出のソースタームの推定をより正確に行なう事が必要となるだろう。」と渋々と認めている(注20)。  まとめると、これまでに説明した不確定さと過小評価すべてを合わせても、UNSCEARは、海洋汚染を77 PBqかそれ以上であると仮定していると言え、これは、京都大学の推定の5倍以上、そして東電の最初の計算の15倍以上にもなる。これらの数字を見ると、フクシマのフォールアウトは、これまでに記録された中でも唯一無二の最大の海洋への放射能流出を構成すると、明確に述べられなければいけない(注21,22)。IAEAの包括的な報告によると、フクシマの放射能フォールアウトは、既に、大気圏核兵器実験、チェルノブイリからのフォールアウト、およびセラフィールドやラ・アーグなどの核燃料再処理工場に並ぶ、世界の海の主要な放射性汚染物質であると位置付けられている(注23)。  UNSCEAR報告書には、米国西海岸の住民にとって興味深い事実が含まれている。直接流出した放射能の約5%のみが、福島第一原子力発電所から半径80km以内に沈着したのである。残りは、太平洋に分布された。環太平洋地域の3−Dシミュレーション(注24)が行なわれており、放出された放射能は5−6年以内に北米沿岸に到達すると言われているが、食品の安全性や地元住民の健康への影響は不確定である。 (3) 放射性物質の放出と放射線への被ばくの推定は、中立的な情報源に基づくべきである。  科学的研究のいくつかは、フクシマの「ソースターム」、すなわち、原子力事故で放出された放射性物質の総量の計算を扱った。福島第一からの放射性物質の放出が現在でも続いており、また、出回っているソースタームの推計値が事故直後の数週間の放出のみを扱っているという事実を考慮する間でもなく、集団ベースの健康影響を計算する場合にどのソースターム推計値を用いるかと言うのは重要なことである。UNSCEARのソースタームの計算は、日本原子力研究開発機構(JAEA)の推計値に基づいているが、JAEAとは、フクシマ事故の国会事故調査委員会で、原子力業界からの独立性や安全分野での不注意を厳しく批判された組織である(注25)。  有名なノルウェー大気研究所(NILU)によると、セシウム137の放出はJAEAの推定の3倍26だった。もしも、主な懸念が住民への健康影響の可能性を十分に評価することであれば、なぜ、UNSCEARが、批判のあるJAEAの、中立的な国際機関よりも低いソースターム推計値に頼るのか不明である。日本の原子力業界でなく、中立的な国際機関のデータに頼れば、選択的なデータサンプリングに対する非難を減らすことができる。また、大気放出の評価には、JAEAのようにヨウ素131とセシウム137だけを考慮するのでなく、福島県の土壌、地下水および河川の堆積物から検出された27、ヨウ素133、ストロンチウム89/90や、プルトニウム同位体のような放射性核種も含めることが重要である。ソースターム推定値と同様に、食物と飲料水からの放射性物質の摂取の推定は、原子力災害後の個人の放射線被ばく量全量にかなりの影響を及ぼす。どれほど専門的に行なったとしても、内部被ばくによる健康リスクの評価は、それが基づく仮定よりも正確ではあり得ない。さらに、どのような線量計算も、食物サンプルの選択およびサンプルサイズの決定の方法に左右される。選択的なサンプリング、歪曲や省略などの理由で妥当性に疑問が持たれるデータに基づく推計値は、(健康影響の)予測や健康政策の推奨を行なう際の根拠として容認できない(注28)。  食物内の放射線量に関しては、UNSCEARは唯一無二の情報源として、国際原子力機関(IAEA)のデータベースを用いている。IAEAは、「原子力技術の安全、安心で平和的な利用を推進」し、「原子力の世界中での平和、健康および繁栄への貢献を加速および拡大する」という特定のミッション29の下に設立されたため、 甚大な利益相反がある。IAEAの食物サンプルデータに頼ることは、内部被ばく量評価の信用を落とし、評価結果が操作されているという非難を受けやすいために、賢明ではない。さらに、食物サンプルがどこで誰によって集められたかということを特定することは、選択的サンプリングの疑惑を避けるために得策である。  最後に、客観的に測定された低線量被ばくの人間以外の生物相への影響を理解すれば、人間への真の影響の理解に役立つ可能性がある。UNSCEARは、実際の放射線の影響を決めるのに、最新の生物学的科学的野外調査にあまり頼っているように見えない。その代わりに、1996年と2008年の放射線の人間以外の生物相への影響に関する独自の報告書に言及している。これは、ムソー、マラーやリンドグレンらのような科学者による多くの研究(注30,31)が、チェルノブイリとフクシマでの放射能フォールアウトの影響を調べたにも関わらず、UNSCEARはそれらの報告書以降、新しい知見を得ていないことを暗に示している。 (4) 福島産の農作物の推奨は、放射線被ばくのリスクを増加させる  しばしば、日本国民のほとんどがスーパーマーケットから食品を購入すると仮定されている。これは論理的に見えるかもしれないが、被災地のかなりの部分が農業地域であり、多くの住民が青空市場や自家菜園から食物を調達しているという事を無視している。「地産地消」、すなわち、「地元で生産された食物の消費」という主義は、福島県で広く奨励され、市町村が地元産の農作物を学校給食で使うことを奨励あるいは命じる所まで行った(注32, 33,34)。それに加えて、日本全国で、政府が「食べて応援」キャンペーンを実施し、福島県産の食べ物の購入と消費が連帯行動の一環として推進された。福島県民が日本全国で流通している食物を摂取するという仮定は、おそらく、実際の放射能汚染された食物の摂取の過小評価に繋がることになる。最後に、この原子力災害が発生した当初には、地震と津波のために住民には新鮮な食物と飲料水が不足していたことを思い出す必要がある。この期間中、農作物の放射能検査を行なうことはできなかった。故に、適切な検査や規制が実施された前に、住民が高濃度に汚染された地元の食物や飲料水を摂取したかもしれない。この事実は、UNSCEAR報告書で言及されていないが、内部被ばく線量の計算における誤差要因のひとつとなる可能性がある。 (5) ホールボディーカウンターは、内部被ばく量を過小評価する  チェルノブイリの経験によると、吸入あるいは経口摂取された放射性物質による内部被ばくは、被ばくした集団においての将来の健康影響の最も重要な決定要因の1つである。多数の要素があるため、原子力災害後の内部被ばく量の評価が難しい事は共通理解の下にある。公衆衛生の疫学で一般的に行われるのは、注意深い仮定に基づいて影響を受けた集団の健康リスクの可能性を適切に考慮すると言う保守的な推定である。簡単に言うと、「安全を確保し、後悔しないようにする」(備えあれば憂いなし)である。WHO/IAEAの健康リスク評価(注35)は、放射能放出、分布および取り込みの科学的評価を日本国民の被ばく量推計に用いることにより、この原則に従おうとした。我々は、WHO/IAEA報告書内の計算の多くの科学的根拠を批判する一方で、この保守的な取り組み方が被ばくした集団の健康に対する懸念と対処する正しい方法であるとみなしている。  しかし、UNSCEAR報告書は、ホールボディーカウンター(WBC)によって得られたデータに基づいて内部被ばく線量を推定することにより、このアプローチを阻んだ。、単独のパラメータの測定結果に基づいて、広範囲にわたる医学的な勧告を行なうことは、根本的な誤りである。さらに、ホールボディーカウンターの検出限界値は通常セシウム134/137両方で300 Bqほどであり36、それ以下の被ばく量は、健康に影響があるかもしれなくても、無視されている。また、ホールボディーカウンターが測定できるのはガンマ線だけである。セシウム134や137のような放射性核種のベータ崩壊は、ガンマ線の量から概算しなければならない。これは、ホールボディーカウンターを、ある特定の放射性核種で校正しなければならないという意味である。ベータ放射線やアルファ放射線を放出する他の放射性物質の影響は、ホールボディーカウンターでは評価ができない。その上、ホールボディーカウンターは、測定時のガンマ線量のみを検知するのであり、過去の放射線被ばく量に関しての情報は得られない。セシウム137の生物学的半減期が70日であるのは分かっているが、その期間が過ぎると、約半分の放射性物質が体内から排出されていることになる。過去2年半に渡って継続された放射性物質の経口摂取および吸入による取り込みのために、放射線被ばくの真の度合いの評価がより困難となり、過小評価の可能性がさらに高まることになる。最後に、ベクレル単位で測定された放射能の、シーベルトの等価線量推計値への変換に関わる不確実性は、UNSCEAR報告書では言及されていないが、エラー要因のひとつである(注37)。 (6) 東電の作業員の線量評価は信頼できない  既に述べたように、ロビー活動の影響が疑われない、独立した機関によるデータを提示することは重要である。これまでの福島第一原子力発電所の24,500人の作業員の健康評価は、東電そのものから提供されたデータのみに基づいている。UNSCEARは、ヨウ素132とヨウ素133の影響が無視されているために、作業員の内部被ばく量が20%過小評価されていると正しく批判した。しかし、これは氷山の一角に過ぎない。東電は、公式統計に含まれない日雇い労働者を雇用する多くの下請業者と契約していると報告されている(注38,39)。これらの下請には、雇用している労働者の医療検診を全く行なっていない業者もあると非難されている。また、線量計の紛失、線量計をわざと鉛のケースに入れて測定できないようにした意図的な操作や、放射線測定機器の不具合などの報告も多数である(注40,41,42)。これらの理由によって、東電から提供されたデータを、予測値を算出するための代表的で妥当な根拠として受け止めるのは困難である。  被ばくした作業員において、「放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない(注43)。」と述べるのは間違いである。慢性の低線量放射線被ばくに関しては、ウラン鉱山労働者(注44,45,46,47,48,49)、核実験場の風下の住民(注50,51,52)、核工場の労働者(注53,54,55,56)、原子力発電所近辺の住民(注57)から、チェルノブイリの清掃作業員(注58,59,60,61)までもを含む非常に多様な集団において重要な健康影響がみられたことが、多くの研究で示されている。これは最終的には、研究デザインと、科学研究の原理の厳守の問題である。東電の場合は、これまでの意図的な操作の試みの回数から判断して、これが厳守されていると仮定できない。 (7) 胎芽の放射線への特別な脆弱性が考慮されていない  UNSCEARは、胎内の子供の放射線感受性が1歳児と同じだと認識したWHO/IAEAの健康リスク評価(注62)に頼っている。この慣行は、UNSCEARの推計にも取り入れられているが、新生児の生理学と放射線生物学の原理を否定するものである。胎芽(訳注: 受精後8週間まで)、胎児(訳注: 受精後8週間以降)、そして子供には、電離放射線への感受性という観点では、大きな違いがある。母親の皮膚、腹筋と子宮によって遮断されるために、胎内の子供の外部被ばく量が子供や大人に比べると低いことが知られている一方、これは、原子力災害においてより関連性が高い要因である内部被ばくには当てはまらない。胎内の子供は、臍帯静脈を通して摂取する放射性物質に被ばくし、母親の膀胱に溜った核種からのガンマ線の照射を受ける可能性もある。母親が経口摂取あるいは吸入したヨウ素131は、胎内の子供の甲状腺に蓄積し、誕生後に甲状腺疾患や甲状腺癌の発現に繋がる可能性がある。また他の放射性核種であるセシウム137は、胎盤を自由に通り抜けて胎内の子供に入り込み、また、羊水や膀胱にも溜まり、胎内の子供をあらゆる方向からベータ線とガンマ線で照射する。さらに重要なのは、一定の放射線量は、もっと年上の子供においてよりも、胎内の子供においての危険性が高い。すなわち、胎内の子供では、体組織の代謝と細胞の有糸分裂率が高いため、ゲノムの突然変異の機会が増えるのである。胎芽あるいは胎児は、免疫システムと細胞修復メカニズムがまだ完全に発達していないため(注63)、悪性腫瘍の発達を十分に防ぐことができない。科学界では、「電離放射線への胎内被ばくは、催奇性、発癌性、突然変異誘発性である。この影響は、被ばく量と胎児の発達段階と直接相関する。胎児は、器官形成期(受精後2−7週間)と初期の胎児期において放射線への感受性が最も高い(注64)。」と一般的に認められている。胎内の子供と成長した子供の間での生理学的な差異を考慮しないと、この、特に脆弱性のある集団においての健康リスクを深刻に過小評価することになる。電離放射線への被ばくひとつひとつが定量化できるリスクを伴うが、これは、1950年代後半から多くの研究で示されてきたように、胎芽での方が、胎児やもっと大きな子供、あるいは成人でよりも、はるかに大きい。 • アリス・スチュワート博士は、レントゲンの胎内被ばくに起因した小児癌の最初の疫学研究(注65, 66)に携わった。スチュワートは、妊婦の腹部が一度レントゲン照射を受けたら、小児癌の発症が50%増加したと示すことができた。また、スチュワートの研究は、直線的な影響が15 mGyという低線量まで見られたのを確認したが、これは、小児癌リスクがレントゲンへの胎内被ばくの量に比例して増加すると言うことを意味する。これらの影響についての他の説明となる交絡因子を見つけることはできなかった。 • 1997年に、ドールとウェイクフォードは次のように結論づけた(注67)。「様々な国々での多くのケースコントロル研究で、一貫した関連性が見つかっている。これらの研究結果を合わせて得られた過剰相対リスクは統計的有意性が高く、過去に、妊婦の腹部のレントゲン検査が約40%の比例したリスク増加に繋がったことを示唆する。(中略)胎児が胎内で10 mGyの放射線被ばくを受けると、結果として小児癌のリスクが増えると結論付けられる。」 • 世界中での多くの大規模研究(注68, 69, 70)により、スチュワートらの研究結果が確認され、生前の放射線被ばくに対して、より注意深いアプローチが取られるようになった。 (8) 甲状腺癌や他の癌は、今後数十年間に渡ってモニタリングする必要がある  チェルノブイリ事故後、最も顕著に見られた癌のタイプは甲状腺癌だった。福島県での悪性疑惑のある甲状腺生検の有病率は、現在、18歳以下の小児10万人中22.3 人(絶対数:43人)であり、甲状腺癌が確定した症例の有病率は、10万人中9.3 人(絶対数:18人)である(注71)。日本の小児(19歳未満)における2000年から2007年の間の甲状腺癌の発生率は、10万人中0.35人にすぎなかった(注72)。スクリーニング検査で検出された有病率をフクシマ事故前の発生率と直接比較することはできないにしても、これは、懸念される人数であり、これほど多い症例数は、誰も予期していなかった。UNSCEARの国連総会への報告書(注73)は、「福島県の小児において明らかに増加している検出率は、放射線被ばくと無関係である。」と示唆している。実際、福島県での甲状腺異常の状況はまだ展開中であり、将来の傾向について現時点で語れることは非常に少ない。いくつかの国際研究によると、小児における甲状腺結節の悪性率は成人よりはるかに高く、おおよそ25%(2−50%)である(注74,75,76)。  さらに、福島県のより遠方の地域の約10万人の子供達は、まだ甲状腺検査の一次検査を受けておらず、一次検査で重要な結果(例:普通より大きな甲状腺結節や嚢胞)が出た子供達の約半数が、二次検査を受診していない。これに関連しては、日本政府の緊急対策本部が安定ヨウ素剤投与を指示せず、多くの子供達を、事故後3 ヶ月まで牛乳、水道水、野菜や果物に危険な高濃度レベルで含まれていた放射性ヨウ素131に被ばくさせた可能性があることを思い出すことが重要である。旧ソビエト連邦では現代的な超音波機器がなく、政府規制や資金不足のために炉心溶融直後の数年の精密検査が制限されたので、チェルノブイリとの比較は困難である。  また、原子力災害後に甲状腺癌が顕著となるのは、疫学調査の選択バイアスのせいである可能性があり、稀な小児癌の突然の増加を検出するのは簡単であるが、他の固形癌、リンパ腫や白血病などはベースラインの発症率が比較的高いか、潜伏期がより長いために検出しにくいことを、記憶に留めておくことが重要である。甲状腺エコー検査の他に、今後は、白血病、リンパ腫と固形癌のスクリーニングも開始されるべきである。これらはすべて、チェルノブイリ原子力災害の被ばく者や、原子力発電所周辺の住民で見つかっている(注77,78)。 (9) 非癌疾患や放射線の遺伝的影響も、また、モニタリングされるべきである  循環器疾患、不妊症、子孫における遺伝子突然変異や流産などの非癌健康影響は医学文献で報告されてはいるが、UNSCEARが計算の基盤としているWHO/IAEAの健康リスク評価79では考慮されていない。UNSCEAR報告書は、胎内被ばくによって、自然流産、流産、周産期死亡率、先天性の影響、あるいは知能低下の発症率は増加しないだろうと述べている。また、著者らは、放射線の非癌影響が確定的影響に違いないと仮定しているが、その一方で、非癌影響は、放射線の発癌影響同様に、本質的に確率的影響かもしれないと仮定することも妥当である。電離放射線の循環器系への確率的リスクを示唆する研究論文は多数存在するが、これは、血管内皮の放射線による損傷の可能性があり、高血糖症、高コレステロール血症、高脂血症、高血圧症や他の独立したリスク要因の影響と似ている。リトルらは、低線量電離放射線への分割した被ばくによる循環器系疾患の妥当なモデルを提案した(注80)。 また、ロシアの研究者数名が、チェルノブイリ原子力災害後に被ばくした集団における非癌影響についての研究論文を発表した(注81, 82)。 (10) 放射能フォールアウトと自然放射線との比較は誤解を招く  UNSCEARの国連総会への報告書では、「福島第一原子力発電所事故による実効線量の推計値は、自然由来の放射線源(宇宙放射線や食物、大気、水や環境の他の部分での放射線源)への被ばく線量と比較することにより、総合的な視野で捉えることができる。」と述べられている。このような比較は、度々、低線量放射線の健康影響を軽視するために例として挙げられ、誤解を招くだけでなく、原子力災害の公衆衛生への影響を系統的に過小評価する結果を招く。日本人が1年間で受ける自然バックグラウンド放射線量の平均値は約1.5 mSvであり、その内訳は、約0.3 [...]

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