内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
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内部被ばくと健康被害

モニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の継続配置を求める要請 賛同団体募集 2018年4月14日まで。

原子力規制委員会は、2018年3月20日、福島第一原発事故後7年が経過したことから、福島県内のモニタリング結果を整理、福島県及び県内市町村への意見照会を経て、学校や保育園、公園など子ども達の生活空間にあるモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の配置の見直しを行う方針を決定しました。 2017年12 月、原子力規制委員会が県内市町村への意見照会を行った結果、各自治体からは継続配置を求める意見が提出されているのにも関わらず、原子力規制委員会はその意見を無視する形で避難指示区域、避難指示解除区域以外の地域のモニタリングポストの撤去を決定しました。 この件に関して、市民からは不安な声と共に「何かしらの意思表示をしなければ」という声が多数あがっています。その声を受け、私たちはこのような会を立ち上げて、原子力規制委員会によるモニタリングポスト撤去の決定の取り消しを求めていくことになりました。 今後は署名集めなどを展開しながら、市民のみなさんと共にこの動きを強めていきたいと思っていますので、ご協力をよろしくお願いいたします。 原子力規制委員会「リアルタイム線量測定システムの配置の見直しについて(案)」http://www.nsr.go.jp/data/000224268.pdf 配置の見直しについての経緯や各自治体からの意見、それについての原子力規制庁の考え方などが掲載されています。 【今後の予定について】・この件について、私たちは原子力規制委員会に「モニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の継続配置を求める要請書」を提出します。・そのほか、各自治体に対しても「モニタリングポストの継続配置を求め続けてほしい」という市民の声を届けると共に住民説明会の開催なども求めながら全体の動きをつなげていく予定です。 「モニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の継続配置を求める要請書」URL 【第一弾2018年4月16日(月)提出】http://ur0.work/Jxs5 【原子力規制委員会への要請書提出】4月16日(月)13:30~ ※賛同団体を募集します。メールにてご連絡ください。(締め切り:4月14日) 【署名集めについて】・署名用紙は以下からダウンロードが可能です。(一次締め切り:6月30日)署名用紙URLhttp://ur0.work/Jxsg ・ネット署名も行います!※ネット署名については、署名用紙に記入してくださった方以外の方が対象となります。ネット署名URLhttps://www.change.org/p/モニタリングポストの継続配置を求める市民の会-モニタリングポストを撤去しないでください 署名のご協力、拡散のご協力をよろしくお願いいたします‼ また、「署名の呼びかけをするよ~!」と手をあげてくださる方、ご連絡をお待ちしています!! ~モニタリングポストの継続配置を求める市民の会~共同代表: 鈴木真理・片岡輝美・千葉由美事務局・問い合わせ先:〒963-0101郡山市安積町日出山1-31メールアドレス:monitoringpost.shimin@gmail.com電話番号:080-2805-9004

内部被ばくは外部被ばくに比べて、けた違いに危険 市川定夫

元埼玉大学名誉教授 市川定夫氏の書籍「新・環境学 現代の科学技術批判 Ⅲ」(藤原書店 2008年7月30日 2,600円)より、引用。  安斎育郎氏、野口邦和氏、田崎晴明氏などは、ことさらに自然放射能が人間のからだの中にあることを持ち出し、「これくらいの人工放射能は安全」、「除染して福島住民帰還」のための理論を訴えています。果たして、自然放射能カリウム40と人工放射能セシウム137、ストロンチウム90の外部被ばくと内部被ばくの影響は同じなのでしょうか。彼らは、カリウム40もセシウム137・ストロンチウム90も同じようにガンマ線やベータ線を出すから、という理屈です。  元埼玉大学名誉教授であり、アメリカのブルックヘブン国立研究所(BNL)でムラサキツユクサを利用した低線量被ばくを研究した、市川定夫氏の著書「新・環境学 現代の科学技術批判 Ⅲ」(藤原書店 2008年7月30日 2,600円)より、全文引用します。 ☆☆☆☆☆☆☆☆ 引用開始 ☆☆☆☆☆☆☆☆ pp.153~155  すなわち、ヨウ素の植物体内への著しい高濃縮は、実は、古く1960年ごろには確認されていた。1959年にアメリカのサバンナ・リバー原子力工場という軍事用の施設で放射性ヨウ素の大量放出事故が起こったとき、当時の同国原子力委委員会(AEC)が二名の専門家に調査を依頼して、放出されたヨウ素131が空気中から植物体内に200万ないし1000万倍にも高濃縮されていたことが判明したのである。しかし、AECは、この調査結果を機密扱いとしたため、1970年代半ば過ぎまで、この恐るべき高濃縮の事実が広く知られることはなかった。  日本の原子力委員会がヨウ素131の空気中から植物体内への濃縮係数を260万倍、空気中から牛乳へは62万倍と設定したのは、1978年9月のことであり、ヨウ素の著しい高濃縮が長期間隠されていた事実を雄弁に物語っているのである。  ヨウ素131が空気中から植物体内に200万ないし1000万倍にも濃縮されると、その原発からの放出量が放射能希ガスの1万分の1であっても、表2・3で示したように、植物体内でのヨウ素131から、希ガスによる対外被曝よりもはるかに大きな体内被曝を、しかも至近距離から受けることになるのである。 表2・3 希ガスとヨウ素131の対外および体内濃度   原発からの放出比 濃縮係数 植物体内の存在比 希ガス(キセノン、クリプトン) ヨウ素131 1×104 1 1 2~10×106 1 2~10×102  環境放射線つまり空間線量の増加がごくわずかであるのに、ムラサキツユクサの突然変異頻度が有意に上昇したのは、人工放射性核種の生体内濃縮による体内被曝の著しい増大が主因であった。原発からの放出量がごくわずかだとして軽視されていた、希ガス以外の人工放射性核種が、はるかに重大な影響を生物に与えていたのである。 pp.155~157 ■体内被曝の重大性  生体内で高濃縮されるのは、ヨウ素131以外の放射性ヨウ素も同じである。また、マンガン54、コバルト60、ストロンチウム90、セシウム134、同137など、生体内に沈着または蓄積される核種も多い。重要なのは、これら核種がすべて、天然には存在しなかった人工放射性核種であるということである。  これら人工放射性核種が生体内で濃縮、沈着、蓄積されるということは、体内被曝のほうが重大で深刻であるということを意味し、次の四点からそれを理解できるであろう。  まず、線源からの距離の問題である。ガンマ線の線量は、線源からの距離の二乗に反比例する。したがって、ガンマ線を放出するある核種の一定量が体内の一定点、たとえば生殖腺から5メートルの位置にある場合と、等量の同一核種が体内の一定点、等量の同一核種が体内の一定点、たとえば生殖腺から5センチメートルの部位に沈着した場合とを比較すると、後者の場合には、距離が100分の1になるから、生殖腺が受ける線量は、単純計算で前者の1万倍にもなる。つまり、等量の同一核種でも、対外にある場合に受ける対外被曝と対比して、体内に入った場合に受ける線量は、飛躍的に増大することになるのである。  第二に、ベータ線やアルファ線などの飛距離の短い放射線の場合である。ベータ線は、生物組織内では、せいぜい1センチメートルしか透過しないし、アルファ線の飛距離は0.1ミリメートル以内である。したがって、ベータ線やアルファ線を放出する核種が対外に存在する場合には、生物体が吸収する線量がごくわずかであるのに、そうした核種が体内に入ると、飛程距離が短いこれら放射線のエネルギーのほとんどすべてが吸収され、体内被曝が桁違いに大きくなる。つまり、ベータ線やアルファ線は、それを放出する核種が体内に入った場合にのみ、集中的に大きな被曝をもたらすのである。  第三は、濃縮などにかかわる問題である。前述したように、原子炉で産み出される人工放射性核種には。生物内で著しく濃縮されたり、沈着、蓄積されるものが多いが、たとえば、人工放射性ヨウ素は甲状腺に濃縮、放射性ストロンチウムは骨組織に沈着、放射性セシウムは筋肉と生殖腺に蓄積というふうに、核種によってはそれぞれ特異的な組織や器官に集まるため、特定の体内部分が集中的な体内被曝を受けることになる。  第四は、継時性である。たとえば、ある放射性核種が壁に付着している部屋を想定し、かりにそこにいても体内にその放射性核種を取り込む必要がないとすれば、その部屋にいる間は受ける体外被曝も、そこから遠く離れることによって止まる。しかし、体内への取り込みがあって、その核種が体内に濃縮・沈着・蓄積されると、その部屋からどれだけ離れても、その核種の寿命に応じて体内被曝が続くことになる。たとえば、放射線半減期が27.7年(ママ)のストロンチウム90が骨組織に沈着すると、長年にわたって、その周辺でのベータ線の体内被曝が続くのである。  このように、生体内濃縮されたりする人工放射性核種の場合は、体内被曝が対外被曝よりも桁違いに大きくなり、はるかに深刻なものとなるのである。 ☆☆☆☆☆☆☆☆ 引用終わり ☆☆☆☆☆☆☆☆  

『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている 三田茂 2018年2月28日

 『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている 三田医院 三田茂 2011年3月11日の東日本大震災に引き続く東京電力福島第一原子力発電所の爆発により、福島はもちろん東日本は広範囲に放射能汚染された。 東京都で開業医をしていた私は、当院患者さんたちの体調の変化に気付き、首都圏住民を中心に約4000人の検査、診療を行ってきた。   2011年から2016年 私の患者さんたちは、放射能回避の意識の強い人たちなので現在まで重症の疾病の発生は目立たない。 しかし、異常な鼻血、皮下出血(アザ)、リンパ節の腫れ、下痢、喘息副鼻腔炎などの呼吸器疾患の多発、難治化、ケガ、キズ、皮膚炎の治りの悪さ等が気になった。 本来小児特有の病気である手足口病やヘルパンギーナが成人にも多く見られたり、主に高齢者の病気である帯状疱疹が小児にも多く見られたり、他の性病は減少傾向なのに梅毒のみが激増したりしていることは統計からも明らかで、注目すべき変化である。 私は国の定める電離放射線検診に準じた血液検査を、乳幼児から老人、約4000人の受診者に施行してきた。 小児、特に乳幼児に顕著だった白血球減少は、2012年までの1年間はホットスポットとして知られる東京東部から東葛エリアで目立ったが、その後は西部の武蔵野エリアにも広がり、今や首都圏はどこでも同じとなってしまった。 巷では、主に福島の甲状腺癌の話題ばかりが取りざたされるが、そのことのみを論じていては全く不足である。 白血球の減少、白血球像の変化、諸々の自覚症状、感染症のプロフィールの変化、疾病の進行の様子の変化、診断がつきにくく治療の反応が悪くなってきていることなどを分析、議論すべきである。 私の観察によれば、東京首都圏居住者の健康被害は明らかであり、福島県の汚染の少ない地域や北関東の住民のそれよりもむしろ深刻である。   『新ヒバクシャ』とは? 各症状の程度は個人差が大きいが、差はあっても、東日本居住者は全てが影響を被った当事者であると認識し直すべきであり、今回私は『新ヒバクシャ』という概念を提唱する。 2011年福島原発爆発事故により放射能被曝させられた私たちは、ヒロシマ・ナガサキの、ビキニの、チェルノブイリの、湾岸戦争の、そして軍事や核産業に従事するヒバクシャたちに引き続く21世紀の『新ヒバクシャ』として自身を再認識し、自ら健康を保持しなくてはならない。 また医療者は診療にあたり、今までの医学常識が今後通用しなくなる可能性を忘れてはならない。 福島原発事故は未だ収束の見通しもなく、2017年の時点で首都圏においても降下物、水道水とも放射性物質が検出(原子力規制委員会による)され続けている。 『新ヒバクシャ』は長期にわたる低線量被曝を受け続けている点で、過去のヒバクシャとは異なる特徴がある。 チェルノブイリ等の先人の研究は当然尊重し参考にしつつ、しかし全く新たな健康被害が発生する可能性を忘れてはならない。   『能力減退症』とは? それまでも訴えはあったが、『新ヒバクシャ』たちの生活に影響を及ぼす症状が2016年頃から急に増加しその程度が強くなってきた。 記憶力の低下 ものおぼえの悪さ約束の時間を間違えるメモを取らないと仕事にならない 疲れやすさ 仲間についていけない長く働けない頑張りがきかないだるい疲れると3~4日動けない 昔できていたことができない怒りっぽく機嫌が悪い寝不足が続くと発熱する(小児に多い) 集中力、判断力、理解力の低下 話の飲み込みが悪く噛み合わないミスが多い面倒くさい 新聞や本が読めない段取りが悪い不注意やる気が出ない学力低下能力低下頭の回転が落ちた宿題が終わらない コントロールできない眠気 倒れるように寝てしまう学校から帰り玄関で寝てしまう 昼寝をして気付くと夜になっている居眠り運転仕事中に寝てしまうので仕事をやめた 第2次大戦後、ヒロシマ・ナガサキのヒバクシャにも同様の症状は非常に多く見られ、都築正男東大名誉教授は「慢性原子爆彈症の後障碍」と、肥田舜太郎医師は「原爆ぶらぶら病」と記載した。これらの症状はビキニのヒバクシャ、チェルノブイリのヒバクシャ、核産業のヒバクシャの多くをも悩ませ続けている。 今回私はこの現象を新たに『新ヒバクシャ』の『能力減退症』と呼びたいと思う。 さらに臨床医として日々の診療、治療で感じているのは、疾病が典型的な経過を取らないので診断が困難な症例、病状の悪化に伴うはずの身体所見(炎症所見など)や血液検査データの変化が乏しく判断を誤りやすい症例、治療に対する反応が悪い症例を少なからず経験することである。 病原菌に対する防御力の低下 ちょっとした病気にかかりやすい 身体の免疫力の低下、あるいは時間的な遅れ 感染に際して期待される白血球増多がみられず、 あるいは遅れるために治療が効果を表すのに時間がかかる生体の反応が間に合わなければ深部感染症に進行し予想外に急速に敗血症から死に至ることもあり得るのではないか 傷害組織の治癒力の低下 小さなキズの治りが悪い皮膚炎が治りにくい蜂窩織炎が多い これらを含めた、多面的「能力」の「減退」=『能力減退症』が事故後3~4年を経て急速に増えていることを感じ、危惧するのである。   『能力減退症』の原因 これらの困った症状が、東日本から西日本への移住、保養ではっきり改善することは多く、また東日本に戻ると悪化する体験を多くの『新ヒバクシャ』が持っている。 『能力減退症』の原因が放射能被曝単独であるとの証明まではできないが、旧来のヒバクシャたちの経験した症状との強い類似性から考えると原因の中心に放射能被曝があることは間違いないであろう。 また、1980年台から強く認識されるようになった化学物質過敏症の症状の中にはこれらと非常に類似した記載があることから、『能力減退症』とは、一部化学物質過敏症的であるとも言えるし、放射能被曝によって身体の感受性が変化して化学物質過敏症の発症をも誘発したという可能性もあるだろう。 例数は少ないが、MRIなどの脳の画像診断を行った結果では、中枢神経にはっきりと認識できる病的変化は起きていないし、認知機能検査も正常範囲である。 話題となりやすい甲状腺ホルモンレベルは、健常人の値とかわりなく変化は全く見られない。 私は2017年3月頃より『能力減退症』を訴える患者さん約100名を中心に、脳下垂体-副腎皮質ホルモン検査を行った。 具合は悪いが寝込むほどではなく、不便ながらも生活できているくらいの人たちの上記ホルモンレベルは、正常の下限周辺から低値であり、元気な人たち(正常中央値に近い)と比較して分布が明らかに低く偏ることが示された。 この相対的脳下垂体-副腎皮質機能低下症というべきホルモン異常の状態が『能力減退症』の原因の大きな一つであるのは、後述の治療によって生活能力が実用的に大きく回復することからも確実である。   『能力減退症』の治療 今まで医学的にはっきりした病名のつかなかったこれらの症候は、したがってその治療に今までは積極的なものはなく、「ヒビの入った容器として大切に取扱う外ない(都築)」「無理な生活を避けしめるように指導する(都築)」というに留まっていた。 「無理をせず、休息を十分取り、早寝する」といった指導は確かにある程度は有効であった。 しかし『能力減退症』の症状は、2016年頃(被曝後5年)から症例数は多く、程度は強くなっており、生活指導のみでは不充分で、就学、就労に差し支えるほどになってきた。 相対的に不足している副腎皮質ホルモンは、経口的に補充投与して正常レベルに近づけることが可能なので、2017年4月よりそのような治療を開始したところ、その約70~80%が「能力」の回復を実感した。 眠気が取れた霧が晴れた感じ昔のように働ける元のように明るくなったと言われる 若くなったと言われた気分が上向きになったスムーズに理解できる頭の回転が30%から80%に上がったできなかった宿題がすぐ終わるイライラしなくなった不安なく運転できる目のかすみが取れる等々 相対的脳下垂体-副腎皮質機能低下症に対しては、注意深く不足ホルモンの補充をすることで『能力減退症』症状の改善が得られたが、しばらくの治療の後、減薬、休薬すると再び症状が悪化する例が多いことも事実で、副作用を起こさないように個々に内服量を調整しながら治療を継続している。 『能力減退症』と明確に区別できない強い自律神経症状に悩まされている人もまた多いが、このような人は化学物質過敏症を併発している可能性(もともとあった過敏症が悪化していることも)も高く、化学物質を回避する指導が有効であることも多く経験している。 ある種の漢方薬治療も症状改善に結びつくことが多く、ホルモン低下症例に対しても効果を示すことが多いようである。   『新ヒバクシャ』の皆さんに 2011年以降東日本に住んでいた、あるいは今も住んでいる人たちは、自分自身を『新ヒバクシャ』としてしっかり認識し、体調の変化、疾病に対応していただきたい。 「歳をとったから」などと安易に納得せず、前述の諸症状にあてはまる点はないか考えて欲しい。チェルノブイリでは、ヒバク=老化と考える人も多い。 私が最も心配するのは、感染に対する反応性の低下である。医療機関で行った検査では大きな異常がなく、医師に「軽症あるいは異常なし」と言われたとしても、自覚的に体調が悪ければ、しつこくそれを訴えて欲しい。『能力減退症』では身体の防衛反応が低下するため、検査データが異常を示しにくくなるので、本当は意外に重症かもしれないからである。   医療者、とくに開業医の先生方に 症状と診察所見と検査データが乖離している、診断がつかない、治療効果が思うように上がらないときには、『能力減退症』の可能性をも考えていただきたい。 白血球数は、増多(抵抗力大)より減少(抵抗力小)が、むしろ病勢の悪化、重症化を示しているかもしれない。 コルチゾール低下傾向の人が多いので、その補充が功を奏する可能性もある。 当然のことと考えている自然治癒力が低下すると治療にも工夫が必要となる。 チェルノブイリ原発事故前に50ヶ月ほどであった胃癌・肺癌患者の余命が、事故後10年で2ヶ月まで短縮したというウクライナの論文(京大原子炉実験所今中助教編)があることも知ってほしい。   再び『新ヒバクシャ』について この2~3年、眠気が強い病気にかかりやすい急に老けた仕事が辛い物忘れが激しいといった『能力減退症』症状の訴えが、西日本在住の人たちにも散見されるようになった。 化学物質過敏症、電磁波過敏症の悪化も無視できない。 アメリカからの旅行者が、子どもの症状を当院で訴えたこともある。 低線量被曝は広く考えれば、全日本、全地球規模のものであり、もともと虚弱体質の人や障がい者、難病患者さんたちは、2011年以降その影響を強く受けた印象がある。 『新ヒバクシャ』には『能力減退症』以外にも注意すべき症状が起きることがある。 免疫力は低下するのみでなく暴走することもあるが、自己免疫疾患の増加、アレルギーの悪化、更にはアナフィラキシー様発作の増加は気になる。   むすび ヒロシマ・ナガサキのヒバクシャ、ビキニのヒバクシャの医療に当たった都築正男東大名誉教授は、昭和29年「慢性原子爆彈症について」のおわりに 「臨床醫學の立場からするならば(中略)慢性原子爆彈症の人々に何かの異狀を認めたならば、それが自覺的で苦惱であろうと、他覺的の症狀であろうと、對症的だけの處置だけでも之を施して善處するのが臨床醫學の責務ではあるまいか。學問的に未解決であるとの理由で拱手傍観することは避けたいものである。」とし 「病者と共に苦しみ共に樂しむことを日常の仕事としていられる臨床醫家は、私の微意のあるところを充分に汲みとって下さると思う。」とむすんでいる。 この論文に私は強く同意し、60余年を経て新しい概念を提唱する。   2018年2月28日 三田茂

立憲民主党の脱原発法案は本物か?

[初稿]2018年2月24日 [追記]2018年2月26日  矢部宏治「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか」集英社,2014年 pp.95~99より抜粋追記。  2018年2月20日、立憲民主党は、原発ゼロ基本法案を発表しました。果たして、この法律ができれば、脱原発は実現できるのでしょうか?  以下、東京新聞の記事と、その下に立憲民主党のホームページに掲載されている、原発ゼロ基本法案(骨子)を掲載します。 全原発 廃炉決定5年以内 立民のゼロ法案 全容判明  2018年2月21日 東京新聞 朝刊    立憲民主党が三月上旬に国会に提出する「原発ゼロ基本法案」の全容が二十日、判明した。基本理念で「全ての原発を速やかに停止し廃止する」ことを掲げ、法施行から五年以内に全原発の廃炉を決定する目標も明記した。  一月にまとめた法案骨子の段階では、原発の再稼働について、石油の輸入が途絶えるなど「原子力以外のエネルギー源を最大限活用しても、安定供給の確保に支障が生じる場合」と非常時に限定して例外的に認めることも盛り込んでいた。その後「非常時こそ原発の危険が高まるので現実的ではない」などと市民から意見が多く寄せられたため、例外規定は削除した。  全原発廃止については、法案骨子で「速やかに」との表現にとどめていた手続きの進め方を具体化。「法施行後五年以内に全原発の運転を廃止」とし、廃炉を決定する期限を盛り込んだ。  同法案では、原発ゼロへの道筋について、省エネの推進と再生可能エネルギーの拡大を掲げ、二〇三〇年時点の電力需要を一〇年比で30%以上減らし、再生エネによる発電割合を40%以上とすることを条文に明記している。  国の責務として、廃炉で経営悪化が想定される電力会社の損失に政府が「必要な支援をする」と明確にすることで、電力会社も原発ゼロを受け入れやすい環境づくりを行う。原発立地自治体にも「雇用創出や地域経済の発展」に措置を講ずるとした。  原発を廃炉にしても残る使用済み核燃料については「再処理は行わない」ことを打ち出した。 (山口哲人) ■「原発ゼロ基本法案」のポイント ・原発廃止とエネルギー転換を実現する改革に関し、国等の責務を明らかに ・全原発の速やかな廃止、停止 ・法施行後5年以内に全ての原発の運転廃止(廃炉決定) ・2030年までに再生可能エネルギーの供給量を40%以上 「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案(仮称)」(通称:原発ゼロ基本法案)骨子案 第一 目 的 この法律は、原発廃止・エネルギー転換(全ての発電用原子炉の運転を廃止するとともに、電気の需要量の削減及び再生可能エネルギー電気の供給量の増加によりエネルギーの需給構造の転換を図ることをいう。)を実現するための改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、「原発廃止・エネルギー転換改革推進本部(仮称)」を設置することにより、これを総合的に推進することを目的とすること。 第二 基本理念 原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとすること。① 電気の安定供給の確保を図りつつ、全ての発電用原子炉を計画的かつ効率的に廃止すること。※ 全ての発電用原子炉を速やかに停止させる。                                  ↓ 市民の意見により、「法施行後5年以内に全ての原発の運転廃止(廃炉決定)」に変更。 ② エネルギーの使用の合理化及び再生可能エネルギー源の利用を促進すること。 第三 国等の責務一 国の責務1 国は、第二の基本理念にのっとり、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う国の社会的な責任を踏まえ、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革を推進する責務を有すること。 2 国は、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革に当たって生じ得る発電用原子炉設置者等の損失に適切に対処する責務を有すること。 3 国は、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革を推進するに当たっては、原子力発電施設等立地地域の経済に及ぼす影響に配慮しなければならないこと。 二 地方公共団体及び電気事業者等の責務 地方公共団体及び電気事業者等は、第二の基本理念にのっとり、国による原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革の推進に協力する責務を有すること。 第四 法制上の措置等 政府は、第五の基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上、財政上、税制上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならないこと。この場合において、第五の一の2及び3の基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上の措置については、この法律の施行後○年以内を目途として講ずるものとすること。 第五 基本方針一 発電用原子炉の廃止1 政府は、この法律の施行の日から○年を経過する日までに全ての発電用原子炉の運転を廃止することを目標とするものとすること。※ 次のような案も検討できるか。    1  政府は、平成○○年までに全ての発電用原子炉の運転を廃止すること    を目標とするものとすること。2 政府は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う国の社会的な責任を踏まえ、発電用原子炉の廃止並びに使用済燃料及び放射性廃棄物の管理及び処分に関する国の関与の在り方について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じなければならないこと。3 政府は、電気の安定供給の確保を図りつつ、全ての発電用原子炉を計画的かつ効率的に廃止するため、次に掲げる措置を講ずるものとすること。① 発電用原子炉を運転することができる期間の延長を認めないものとすること。② 発電用原子炉の運転については、原子力以外のエネルギー源を最大限に活用してもなお電気の安定供給の確保に支障が生ずる場合で、かつ、当該発電用原子炉施設に係る原子力災害に関する適正かつ確実な地域防災計画が作成されている場合に限るものとすること。※ 相当の期間にわたって支障が生じている場合に限定。                    ↓ 市民の意見により、削除。 ③ 発電用原子炉の設置の許可及び増設を伴う変更の許可を新たに与えないこととするために必要な措置を講ずるものとすること。④ 使用済燃料の再処理は行わないものとし、使用済燃料及び放射性廃棄物の管理及び処分が適正な方法により行われるよう、必要な措置を講ずるものとすること。⑤ 再生可能エネルギー、可燃性天然ガスその他の原子力以外のエネルギーの利用への転換を図るために必要な措置を講ずるものとすること。⑥ 発電用原子炉等を廃止しようとする事業者に対し、必要な支援を行うものとすること。⑦ 原子力発電施設等立地地域における雇用機会の創出及び地域経済の健全な発展を図るものとすること。⑧ 廃炉等に関する研究開発その他の先端的な研究開発を推進するために必要な措置を講ずるものとすること。二 エネルギーの使用の合理化及び再生可能エネルギー源の利用の促進1 政府は、次に掲げることを目標とするものとすること。① 一年間における電気の需要量について、平成四十二年までに平成二十二年の一年間における電気の需要量からその百分の三十に相当する量以上を減少させること。② 平成四十二年までに一年間における電気の供給量に占める再生可能エネルギー電気の割合を四割以上とすること。2 政府は、エネルギーの使用の合理化及び再生可能エネルギー源の利用を促進するため、次に掲げる措置を講ずるものとすること。① 国等が設置する施設におけるエネルギーの使用の合理化及び再生可能エネルギー源の利用を促進するものとすること。② 事業者が行うエネルギーの使用の合理化が円滑に実施されるよう、必要な措置を講ずるものとすること。③ 建築物のエネルギー消費性能の更なる向上を図るために必要な措置を講ずるものとすること。④ 熱についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源及び廃熱の利用を促進するものとすること。⑤ 電気事業者による再生可能エネルギー源の利用の拡大のために必要な措置を講ずるものとすること。⑥ 電力系統の適正化その他の電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の利用の促進を図るために必要な措置を講ずるものとすること。⑦ 地域に存する再生可能エネルギー源のその得られた地域における利用を促進するために必要な措置を講ずるものとすること。⑧ 地域の住民又は小規模の事業者の再生可能エネルギーの利用又は供給に係る自発的な協同組織の発達を図るために必要な措置を講ずるものとすること。⑨ 再生可能エネルギー源に関する研究開発その他の先端的な研究開発の推進を支援するために必要な措置を講ずるものとすること。 第六 推進計画 原発廃止・エネルギー転換改革推進本部は、この法律の施行後○年を目途として、第五の基本方針に基づき、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革の推進に関する計画(以下「推進計画」という。)を策定しなければならないものとすること。 第七 本 部一 原発廃止・エネルギー転換改革推進本部 原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革を総合的かつ集中的に推進するため、内閣に、内閣総理大臣を本部長とする「原発廃止・エネルギー転換改革推進本部(仮称)」(以下「本部」という。)を置くこと。二 所掌事務 本部は、次に掲げる事務をつかさどること。① 推進計画を策定し、及びその実施を推進すること。② [...]

自主上映『小さき声のカノン』と鎌仲ひとみ監督の講演会 ゲスト ウラジミール・マグリシェフ先生(ベラルーシ) 2018年3月11日 10:00 札幌

[ 2018年3月11日; 10:00 AM to 5:00 PM. ] 自主上映『小さき声のカノン』と鎌仲ひとみ監督の講演会 ゲスト ウラジミール・マグリシェフ先生(ベラルーシ)            日時      2018年3月11日(日) 場所      札幌市北区北7条西6丁目(地図) 上映      自主上映 詳細     【上映日時】 2018年3月11日(日) 鎌仲ひとみ監督の講演、玄米のご飯の試食、 ウラジミール・マグリシェフ先生のお話などがあります!! 【プログラム】 午前10:00~開場 午前10:30~上映開始 休憩 小さき声のカノンに出てくる玄米試食 午後1:00 鎌仲ひとみ監督講演会 午後2:00 「チェルノブイリの保養運動がなぜ始まったか」  ※ ゲスト ウラジミール・マグリシェフ先生を迎え 午後16:30 北海道の保養団体紹介 午後17:00 終了 【会場】 北海道クリスチャンセンター   北海道 札幌市北区北7条西6丁目 【参加費】 1,000円 【お申込み・問合せ】チェルノブイリへのかけはし(野呂美加)  電話番号: 011-511-3680  メールアドレス: info@kakehashi.or.jp  【主催】 NPO法人 チェルノブイリへのかけはし

玄海3号機プルサーマル 燃料装填抗議行動の報告 玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会 2018年2月18日

玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会メールニュース  2018年2月18日発行(2018年第6号) ※ 玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会 事務局の許可を得て、全文を転載します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会メールニュース      2018年2月18日発行(2018年第6号)━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━※このメールニュースは会員の皆様、ご縁のあった皆様にお送りしています。 配信停止希望の方はお手数ですが、ご連絡ください。■CONTENTS【1】玄海3号機プルサーマル 燃料装填に抗議する!行動報告【2】再稼働を止めるために、ひきつづき声を!【3】今後の主な予定━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】玄海3号機プルサーマル 燃料装填抗議行動の報告 九州電力は2月16日より玄海原発3号機の燃料装填作業を開始しました。住民の不安や反対の声を無視した暴挙に、私たちは原発前で断固抗議の声をあげてきました。今回装填する燃料193体のうち32体は、超危険な猛毒プルトニウム入りのMOX燃料。加えて、32体のうち16体はワンサイクル使用したものであり、7年以上、水に浸かったままのものであり、不純物が多く含まれ危険性が増すことに、私たちの恐怖は募るばかりです。私たちは朝7時過ぎから原発正門前に立ち、続々と通勤してくる作業員らに声をかけながら、佐賀・福岡の仲間50人で九州電力社長に対する抗議の声をあげました。 <抗議声明(一部)>住民の不安無視の再稼働に抗議する九州電力は本日2月16日、玄海原発3号機の核燃料装填を開始しようとしている。住民の不安や反対の声を無視した暴挙に、私たちは断固抗議する。原子力規制委員会の更田豊志委員長は「リスクはゼロではない」と繰り返してきた。壱岐市長は更田委員長に対して「リスクがゼロでないと不安なのが人間だ」(2月11日)とまで言っている。原発がひとたび大事故を起せば、放射能により私たちの暮らしは足元からすべて奪われてしまう。なぜ九州電力という一企業の起こす事故のために、私たちは被ばくを強いられなければならないのか、納得いかない。昨年4月、山口祥義佐賀県知事は「やむを得ない」として再稼働に「同意」したが、原発は「やむを得ず」動かす施設ではない。事故大前提の再稼働だ。私たちは安心して暮らすことはできない。 抗議声明全文、詳細報告はコチラから→https://saga-genkai.jimdo.com/2018/02/16/a/ 【2】再稼働を止めるために、ひきつづき声を! 読売新聞等の報道によれば、3月23日(金)にも「玄海3号機を再稼働させる見通しとなった」とのことです。3月23日は玄海原発を止めるための私たちの裁判の口頭弁論(14時~)の日です。ぶつけてきたのか分かりませんが、起動を延期させ、再稼働自体を中止に追い込むように、引き続き声をあげていきましょう。九州電力や国、各自治体に私たちの意志を電話して伝えていきましょう! ※原子力規制委員会 TEL:03-3581-3352 九州電力本店   TEL:092-761-3031 佐賀県庁     TEL:0952-24-2111 【3】今後の主な予定 3月1日(木)14:00~九州電力本店交渉3月7日(水)13:30~裁判書面学習会(@鳥栖キリスト教会)3月 8日(木)~14日(水)「3.111パネル展」佐賀アバンセ1階ギャラリー(10~20時)      https://saga-genkai.jimdo.com/2018/02/06/a/3月19日(月)10:00~佐賀県議会原子力対策特別委員会3月23日(金)佐賀地裁      14:00~行政訴訟第17回弁論、14:30~全基差止第25回弁論       原告意見陳述あり5月26日(土)13:30~提訴8周年年次活動報告会(アバンセ)6月 1日(金)佐賀地裁 13:15~進行協議      14:00~行政訴訟第18回弁論、14:30~全基差止第26回弁論 ◆座談会・報告会を開いていただけませんか?スライド持参でどこへでも伺います! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆会費納入とカンパをよろしくお願いいたします◆命のことだから諦める訳にはいきません。 みなさまからのご支援をお願いします。支える会 年会費5000円  サポーター年会費1口1000円~ゆうちょ銀行 口座記号番号 01790-3-136810       口座名称   玄海原発プルサーマル裁判を支える会他行よりお振込の場合 店名 一七九(イチナナキュウ)店(179)           預金種目 当座 口座番号 0136810━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会★〒840-0844 佐賀県佐賀市伊勢町2-14TEL:0952-37-9212 FAX:0952-37-9213E-mail:saiban.jimukyoku@gmail.comhttp://saga-genkai.jimdo.com/http://www.facebook.com/genkai.genpatsu━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

国際放射線防護委員会(ICRP)も認めた、内部被ばくによる性的発達の遅れと不妊

そもそも国際放射線防護委員会(ICRP)とはいったいどんな組織なのでしょう。国際放射線防護委員会(ICRP)は単なる民間機関であり、その目的は原子力発電の推進のための放射線防護モデルを作る団体です。その多くは各国の原子力規制委員会のメンバーと重なり、国際原子力機関(IAEA)、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)のメンバーでもあります。 日本の放射線防護の考え方は、多く放射線医学総合研究所(千葉県千葉市)が発刊する資料に基づいています。放医研もまた、国際放射線防護委員会(ICRP)と相互交流を行っており、放医研は国際放射線防護委員会(ICRP)から独立な考えを一切持っていません。いわば、ICRPの日本支部的な存在です。 その国際放射線防護委員会(ICRP)が2011年の発表した「ICRP Pub118 組織反応に関するICRP声明」には、生殖器への放射線の影響について書かれた2.3生殖系(pp.77~82)の中で、たった7行、内部被ばくした場合に生殖器に与える影響が記述されています。ここでははっきりとセシウム137、ヨウ素131、ストロンチウム90、プルトニウム238、プルトニウム239、アメリシウム241、トリチウム酸化物の摂取が、子どもたちの性的発達を送られ、不妊を招きかねないことが示唆されています。それも「1度の摂取でも長期抑制効果をおよぼす」と書かれています。 以下、該当する7行を全文紹介します。 「2.組織と臓器の放射線応答 2.3生殖系 2.3.4 内部被ばく (150)137Cs,131I,90Sr,238Pu,239Pu,241Am,トリチウム酸化物は,1度の摂取でも生殖器に長期抑制効果を及ぼす。雌ラットの90Srによる慢性照射(卵巣への線量は1Gy)は、,卵巣内の発育卵胞および始原卵胞の減少と月経周期の延長をもたらす。雄ラットの場合(精巣に最大0.7~0.8Gy)は,精母細胞,精子細胞,精子の数が減少する。セルトリ細胞の核を収容している細管における収縮や中身の喪失,生殖上皮の隔離が頻繁に見られた(ShvedovとAkleyev 2001)。放射性核種が生殖機能に及ぼす影響は複雑で,生殖腺への直接照射とそれが下垂体や内部分泌腺に与える影響の双方に関係する(DedovとNorets,1981;Lyaginskaya,2004)。」 【出典】ICRP Pub118 組織反応に関するICRP声明 正常な組織・臓器における放射線の早期影響と晩発影響 放射線防護の視点から見た組織反応のしきい線量 2011年声明 pp.82   ちなみに、 泌尿器系についての記述には、チェルノブイリ膀胱炎についての記述はありません(ICRP Pub118 2.8泌尿器系 pp.143~151)。これほど顕著な放射性物質の内部被ばくと健康被害についての研究があるにもかかわらず、無視する国際放射線防護委員会(ICRP)の立場は明確です。低線量内部被ばくはないことにするために、そもそも研究対象から削除して、防護モデルを作っているのです。             」  

原子力規制委員会のでたらめ モニタリング・ポストではなくガラスバッヂで個人線量を測るのは間違い。

 2018年1月17日、原子力規制委員会の更田委員長は、定例記者会見で恐ろしい発言をしています。「1マイクロシーベルト/時のところにずっと居住しても、年間1ミリシーベルト被ばくにも達しない」と。 原子力規制委員会 定例記者会見 会議映像 2018年1月17日 4’25~ 問題の発言は6’06~  モニタリングポストは全方位からのガンマ線から空間線量を計算しますが(一部、原子力規制委員会の設置したモニタリング・ポストはバッテリーなどで遮蔽しているので全部ではありません。真実の6割ほどの値になっています)、ガラスバッヂは正面からのガンマ線のみを測定しています。背中側からのものは人体が吸収してしまうからです。第2回市民科学者国際会議(2012年6月23日~6月24日、福島県猪苗代湖で開催)でフランスのクリラッド(放射能調査情報提供独立委員会)CRIIRAD研究所長 ブルーノ・シャレイロン氏が講演の中で、ガンマ線を測定する放射線量計(単位はカウント/秒,count/s)で福島県福島市の中手さんの事務所で測定している動画を紹介されていました。ガラスバッジで個人の線量を測定するでたらめが分かります。 *** *** *** IWJ アーカイブス 市民科学者国際会議 2012.6.24 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/20814  この中の・6月24日 Part1のCRIIRAD研究所長 ブルーノ・シャレイロン氏の講演、31’50~36’35のところです。以下、ブルーノ氏の解説の意訳。(意訳:川根眞也)  福島市中手さんの事務所にて 床 691count/s(秒)。通常は100count/s。駐車場などが放射性物質で汚染されているためのそのガンマ線が窓や壁を通して入ってきている。  少し持ち上げると 1064cout/s。窓や壁からのガンマ線の量が増える。  外の駐車場に近い窓に近づけると 1454count/s。駐車場からのガンマ線の量が増える。  外に出ると上がり、1504count/s。駐車場に出ると2213count/sまでになる。  窓辺に立ち、私のからだを駐車場との間に入れた場合といれなかった場合とで比べてみましょう。  窓辺に置くと、1372count/s。ところが私のからだを駐車場との間に入れると、1042cout/s。差し引き300count分が私のからだに吸収されたことがわかります。このガンマ線が私のからだの細胞のDNAを傷つけるのです。 *** *** ***  つまり、ガラスバッジはからだの前面からのガンマ線しか測っていません。背中側のガンマ線は、人体が吸収するのです。だから、モニタリング・ポストの数値の3分の1ほどにもなるのです。原子力規制委員会がガラスバッヂの数値を、個人の被ばく線量の数値に置き換え、高放射能汚染地帯へ住民を帰還させるのを許してはなりません。  原発事故前の、本来の被ばく管理は、場の管理でした。かつて、放射線管理区域に人が住み続けることは、誰も予想していなかったことです。放射線管理区域相当は、人間の居住を認めるべきではありません。日本での放射線管理区域とはアルファ線核種で4000ベクレル/m2、ガンマ線・ベータ線核種で4万ベクレル/m2です。土壌にセシウム134、137が615ベクレル/kgあれば、1m2あたり4万ベクレルに相当します。  チェルノブイリでもウクライナ、ベラルーシ、ロシアでは3.7万ベクレル/m2が放射線定期管理居住区域と指定されています。放射線管理区域には人は住めない、をまず基本にするべきだと考えるます。ベラルーシでは現在では、法律において、実効被ばく線量を年間1ミリシーベルトから年間0.1ミリシーベルトに低減するまで防護対策を続ける、としています。(アレクセイ・ヤブロコフ他『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』岩波書店,2013年 pp.294)  日本政府は、チェルノブイリの国、ウクライナやベラルーシ、ロシアに学ぶべきではないでしょうか。でたらめな放射線管理はもう止めるべきです。土地汚染で健康影響を判断するべきです。 <参考>「モニタリングポストに人為的操作!?「郡山・相馬・南相馬30~65%も少なく表示」10/5矢ヶ崎克馬氏(会見内容書き出し・資料)」 ブログ みんな楽しくHappy♡がいい♪ さん 2012年10月16日

2011年3月15日以降、関東地方を襲ったのは「セシウム・ボール」ではなく、「ホット・パーティクル」

 茨城新聞が非常にいい記事を書きました。「関東に放射性粒子飛来 福島第一事故当時に放出 内部被ばくの影響調査 日本保健物理学会」茨城新聞 2018年1月14日  関東に放射性粒子飛来 内部被ばくの影響調査 日本保健物理学会                      茨城新聞2018年1月14日(日) ・福島第1事故当時に放出  東京電力福島第1原発事故で大気中に放出された放射性物質の一部から、放射性セシウムがガラスと混ざり合った微小な球状の粒子が見つかった。「セシウムボール」と呼ぱれ、水に溶けず環境中に長期間残存するのが特徴で、事故当時、東京など関東地方に飛来したことが確認された。日本保健物理学会がこの粒子を吸い込んだ場合の内部被ばくの影響を調べている。 280キロ東京理科大などの研究チームは2017年5月、千葉市で開かれた日本地球惑星科学連合の大会で関東に飛来したセシウムボールについて報告した。 チームは、各県に設置されていた大気粉じんの測定機器に注目。 放射性物質を含む雲が関東地方を通過した11年3月15日のフィルターからセシウムボールを検出した。  第1原発から280キロ離れた場所で見つかった粒子は、直径約1マイクロメートル。スギ花粉の10分の1以下ほどの粒子に、0・3ベクレルのセシウムが含まれていた。第1原発2、3号機のセシウムと特徴が似ているため、2号機か3号機に由来するとみられるが、形成過程は詳しく分かっていない。 2号機は同14日午後に炉心損傷が始まり、メルトダウンしたI~3号機の中で最も多い放射性物質を放出した。微小なセシウムボールは風に乗り、同15日午前から午後にかけて関東を通過したとみられる。    ▼断熱材 第1原発近くの福島県双葉町の土壌からはガラスが混ざったいひつな形の放射性粒子が見つかった 直径は関東地方で見つかったセンウムホールの200倍程度で平均200マイクロメートル。数百ベクレルの放射性物質を含み、特徴から1号機由来とみられる。専門家は「Bタイプ」と呼び分けた。 分析した日本原子力研究開発機構の佐藤志彦さん(放射化学)は「原発のさまざまな場所で使われている断熱材の成分と粒子の主成分がうり二つだ」と話す。 1号機は同11日午後に炉心損傷が始まった。ガス状のセシウムが断熱材に吸着された後に熱によって溶け、同12日午後の水素爆発で北北西方向に飛散したとみられる。 東北大の福本学名誉教授 (放射線病理学)は「原子炉建屋などの解体作業中に高濃度のセシウムボールが飛散する可能性が高く、廃炉作業では防護対策が必要だ」と警鐘を鳴らす。              ▼細胞死 健康影響について、日本保健物理学会に調査を依頼した東京大の森口祐一教授(環境システム学)は「外部被ぱくでは特別視する必要はないが、水に溶けないので内部被ぱくの想定が従来とは異なる」と指摘する。 東北大はセシウムボールが人の細胞に与える影響を調べた。培養している細胞のそばにBタイプの粒子を置くと、細胞の増殖が放射線の影響で遅くなった。東北大の鈴木正敏助教(放射線生物学)は「至近距離だと細胞死が起こる可能性がある。生存することができる細胞でも遅れて突然変異などが起こるか調べる必要がある」と話した。 初発見はつくぱ  後に広域で報告    風に乗り拡散か  放射性物質のセシウムを含む微粒子「セシウムボール」は、東京電力福島第1原発から約170キロ離れたつくぱ所内で初めて見つかった。 その後、同市て見つかったものよりもやや小さいセシウムボールが関東地方の広域で相次いで報告された。小さい粒子は風に乗って遠くに飛散した可能性かおる。セシウムを体内に取り込んだ場合、代謝によって少しずつ体外に排出されるが、セシウムボールは水に溶けないため、1部が肺などに長期間とどまる懸念があるという。 *** *** ***  しかし、この「セシウム・ボール」は、NHKを中心とする、日本政府の国家を挙げたデマ・キャンペーンで、本来はプルトニウムを中心とする、「ホット・パーティクル」(高放射能微粒子)と呼ぶべきです。  2014年の足立光司氏らの研究から。  このたった、2.6マイクロメートルの粒子に、セシウム134が3.31±0.06ベクレル、セシウム137が3.27±0.04ベクレル、含まれていた、というのです。  しかし、これは本当に「セシウム・ボール」なのでしょうか。  原子炉のメルトダウンの温度は2865℃ですが、東京電力の資料には未だに2800℃止まりの資料しか出していません。詐欺です。東京電力もメルトダウンを認めたのですから、推定でいいので、原子炉が一体何℃になったのか、公表するべきです。 資料:福島第一原子力発電所1~3 号機の炉心・格納容器の状態の推定と未解明問題に関する検討第3回進捗報告 東京電力 2015年5月20日  NHKなど、たびたび、ガラスの成分が主である、不溶性の放射性微粒子「セシウム・ボール」を紹介していますが、これは間違いです。セシウムの質量はどれくらいなのか?足立光司氏らの研究グループが研究した「セシウム・ボール」など、微粒子の質量のたった5.5%がセシウムであることが推定されています。では、残りの94.5%は何なのでしょうか。 資料:Emission of spherical cesium―bearing particles from an early stage of the Fukushima nuclear accident Kouji Adachi, Mizuo Kajino, Yuji Zaizen & Yasuhito Igarashi Scientific Reports 20130830 pp.3  東京理科大学の中井泉教授らがSpring8を使って、この足立光司らの研究した「セシウム・ボール」を構成している元素を分析したところ、中心部分をはじめウランがあることを見つけています。 資料:Detection of Uranium and Chemical State Analysis 中井泉ほか 2014 American Chemical Society  つまり、これは「セシウム・ボール」などではなく、ウランやプルトニウムを中心とする高放射性微粒子、「ホット・パーティクル」です。  また、山口紀子氏(農業環境科学研究所)らの研究によれば、福島のスギの葉から採取された放射能微粒子の元素分析では、ジルコニウム(Zr)が検出されています。ジルコニウム(Zr)とは言うまでもなく、核燃料棒の被覆管を作る金属です。つまり、原子炉がメルトダウンする温度、2865℃を超えて、被覆管まで溶かし、爆発とともに噴出した際にできた金属粒子であることを示しています。 資料:Supporting Infomation Emission of spherical cesium-bearing particles from an early stage of the Fukushima nuclear accident  死の灰の中にウランが含まれているのはもちろんのこと。さらに、ウランよりももっと多いのがプルトニウムです。宮城県が女川原発3号機でMOX燃料を使用させるための検討会で使った資料です。  東京電力 福島第一原発3号機にはMOX燃料が32体使われていました。MOX燃料の場合、ウラン燃料よりも「死の灰」にプルトニウムが含まれる割合はさらに高くなります。  ウランがこの「セシウム・ボール」の中にあるのなら、プルトニウムがあると考えるべきです。これは「セシウム・ボール」ではなく、プルトニウムを含む「ホット・パーティクル」であり、肺の奥の肺胞に入った場合、60年後にも肺がんを引き起こす可能性がある、ということです。 NHKニュース 内部被ばくの“証拠”撮影 長崎大研究グループ [...]

日米原子力協定、2018年1月16日に日米が相手国に通告しないと自動延長

  日本がアメリカに、使用済み核燃料からのプルトニウム抽出権を放棄する、と通告すべきなのは、今日2018年1月16日まで、でした。同協定は、6ヵ月前にどちらかが通告すれば、日米原子力協定は終了するはずでした。今日のうちに、日本が通告しないということは、同協定の期限、2018年7月16日に自動延長されてしまうことになります。小泉純一郎氏らの原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)が、2018年1月10日になって、「原発即時ゼロ法案」を公表しましたが、なぜ、昨年の国会時に公表出来なかったのでしょうか?日本の原発は、日本の国内問題だけではなく、日本が戦争被爆国でありながら、核大国アメリカを支持していることと、密接に絡んでいます。日米原子力協定の終了ぬきに日本の原発ゼロはありえません。日本の原発ゼロは、すぐれて対米政策の転換を伴わなければなりません。小泉純一郎氏に、その意志はあるのでしょうか?意図的に「原発即時ゼロ法案」の発表を、日米原子力協定の自動延長が決まる、2018年1月16日直前まで遅らせた疑いすらあります。   ちなみに、本日の東京新聞朝刊には、日米原子力協定の自動延長に関する記事は一切ありませんでした。東京新聞も時々、脱原発の世論をミスリードします。東京新聞だけを信用するのは危険です。(東京新聞2018年1月11日朝刊6面に「日米原子力協定自動延長に慎重 河野外相」の記事あり。しかし、2018年1月16日のことは書かず。)  今、確認しましたが、2018年1月16日の朝刊および夕刊で、日米原子力協定の自動延長について書いたのは、毎日新聞朝刊だけであり、朝日、東京、読売はいずれも朝夕刊で書きませんでした。それほど、報道するに足りない事なのでしょうか。各紙の編集長の見識が疑われます。 *** *** *** 日米原子力協定延長へ毎日新聞 2018年1月16日 東京朝刊1面 日米原子力協定が今年7月以降に自動延長されることが16日、事実上確定する。協定は日本に対して使用済み核燃料からプルトニウムを抽出し、混合酸化物(MOX)燃料として再利用する「核燃料サイクル」を認めており、自動延長で日本の核燃料サイクル政策は継続できることになる。  ただ、延長後はいずれか一方が通告すれば6カ月後に協定が終了するため、日本の原子力政策は米国の意向に左右されやすくなる。  米国は原子力技術を他国に供与する際、核不拡散の観点から原子力協定で核物質の扱いや関連設備の取り扱いを規制。日米原子力協定では、非核保有国の日本に対し、使用済み核燃料の再処理やウラン濃縮など核燃料サイクル事業を行うことを特例的に認めている。  1988年7月発効の現協定は今年7月16日に期限の30年を迎えるが、その6カ月前に日米いずれかが終了を通告しなければ自動延長される。日本政府は協定の現状維持を図るべく交渉機会をうかがっていた。だが、トランプ政権の交渉体制が整わず、本格的な交渉を経ることなく自動延長となる。【片平知宏】 *** *** *** 日米原子力協定延長へ 見直し議論せず 原発輸出推進で思惑一致毎日新聞 2018年1月16日 東京朝刊  2面 日本の核燃料サイクル事業を認める日米原子力協定は16日、自動延長が確定する。原子力政策の現状維持で日米の思惑が一致した結果だが、日本の核燃料サイクル政策は事実上破綻。日本政府の「利用目的のないプルトニウムは持たない」との国際公約は説得力を欠いているのが実情だ。  日米両政府には、原子力協定の具体的な見直しは選択肢になかった。「利用目的のないプルトニウムは持たない」という原則を国際的に表明した日本は、核燃料サイクル政策を簡単に変更できない。原発輸出推進で足並みをそろえる米国も日本に配慮した。  安倍政権は原発輸出を成長戦略の柱の一つにしている。輸出には日立と米ゼネラル・エレクトリック(GE)社など日米のメーカーが関わるため、第三国への輸出でも日米の協定が欠かせない。トランプ政権も同様だ。  対北朝鮮での連携をはじめ日米同盟の重要性が増す中、両政府間で協定見直し論議の優先順位は高くなかった。米エネルギー省のブルイエット副長官は昨年10月に来日した際、「(日米協定を)再交渉する理由はない」と明言。続く11月の安倍晋三首相とトランプ大統領の会談でも議題に上った形跡はない。  日本では昨年8月、首相が核燃料サイクル政策に批判的な河野太郎氏を外相に起用したことを受け、協定見直し論が浮上するのではないかという見方が広がった。しかし、河野氏は就任後、持論を封印し、管轄外の原子力政策に踏み込むのを控えている。  河野氏は今月11日放送のBS11の番組で、協定に関連して「プルトニウムの利用を国際社会に胸を張って説明できるような状況をつくる必要、義務がある」と懸念を示したものの、「協定は日本の原子力の平和利用の基盤になっている」とも述べ、見直しには言及しなかった。  協定が自動延長される7月16日以降、規定上は、日米のいずれかが通告すれば半年後に協定を終了できるようになる。米国防総省や国務省の国際安全保障・不拡散局内には、日本が核兵器に転用可能なプルトニウムを大量保有していることへの懸念がある。  外務省関係者は「日米間には信頼関係があり、米側が協定に疑問を持つことは当面ないだろう」と楽観するが、米側で協定見直し論が浮上する可能性は消えていない。【仙石恭、ワシントン高本耕太】 核燃料サイクル、事実上破綻  日米原子力協定で認められている日本の核燃料サイクル政策は原子力政策の根幹をなしてきたが、実態は破綻している。  核燃料サイクルは、原発の使用済み核燃料から「再処理」と呼ばれる化学処理によってウランとプルトニウムを取り出し、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工して再利用する。政府は当初、高速増殖炉でプルトニウムを増やしながら使う「増殖サイクル」を目指したが、中核を担う高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)はトラブル続きで2016年12月に廃炉が決まった。政府はプルトニウムを燃やして消費する「高速炉」をフランスなどと開発するとしているが、具体的なめどは立っていない。  現在、国内でプルトニウムが利用可能な手段は、既存の原発でMOX燃料を使う「プルサーマル発電」のみ。電力大手でつくる電気事業連合会は09年、15年度までに全国の原発16~18基にプルサーマル発電を導入する計画を発表した。だが福島第1原発事故後の規制強化で稼働は関西電力高浜原発3、4号機(同県高浜町)の2基にとどまっており、電事連は16年に「計画を改訂・公表できる状況にはない」とプルサーマル発電の行き詰まりを認めた。  プルトニウムは核兵器に転用できるため、政府は「利用目的のない分は所有しない」ことを国際公約にしている。日本が保有するプルトニウムは16年末現在、国内外で約47トンあるが、プルサーマル発電によるプルトニウム消費量は原発1基当たり年0・4トン程度に過ぎない。さらに年最大8トンのプルトニウムを生み出す能力を持つ日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が21年度上期に完成予定でもあり、日本がプルトニウムを消費できるめどは立っていない。  核不拡散問題に詳しい阿部信泰・元原子力委員は「核燃料サイクルは実態としては動いていない。このままでは、使用目的のないプルトニウムは持たないという日本への国際社会の信頼は低下する。少なくとも再処理工場の稼働規模は小さくする必要がある」との懸念を示した。【岡田英】 

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